研究課題/領域番号 |
18K05308
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
田村 浩司 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (10354820)
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研究分担者 |
安達 基泰 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (60293958)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 増感太陽電池 / タンパク質 / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
高効率光電池の可能性を有する光捕集タンパク質を用いた増感太陽電池開発を目指して、1) 光捕集タンパク質, 2) 増感電池系、の開発を行った。 1) タンパク質に関しては、a)天然タンパク質、および、b)人工タンパク質に関して開発を行った。a) 天然タンパク質では、すでに入手しているクリプト藻では、初期の培養条件の確立が困難であったため、増殖のよいラン藻(Botriococcus braunii)を新たに入手し、合成培地の組成と光照射条件を検討することにより培養条件を決定した。 b) 本研究で計画しているタンパク質分子の改変には立体構造が必要であるが、高い精度で明らかになっているPhycoerythrin555、Phycocyanin 612タンパク質を対象として、大腸菌発現系を用いた人工タンパク質の生産系の構築に着手した。Phycoerythrin555に関しては、天然の酵素と同じく可溶化していることと、色素が一部結合していることを電気泳動実験により確認した。 2) 増感電池系開発では、タンパク質を用いた(a)光電池作製、(b)光応答特性測定を行った。a) 透明ガラス電極に半導体微粒子(チタン酸化物)を塗布し、電気炉で加熱し微粒子を固定した。本年度は光捕集タンパク質として、天然光合成タンパク質であるフィコシアニンを用いて、電池作成と光応答測定を行った。タンパク質溶液を半導体面に塗布・吸着させ、半導体に固定化した。電解液としてヨウ素/ヨウ化物を用い、対極(白金電極)で封入することで電池を構成した。 b) 購入励起光源を用いて光応答を測定した。照射により起電力発生が確認され、照射光強度100mW/cm2(AM1.5G)、照射時間30秒で最大発生起電力は670mVであった。半導体微粒子のみでは、この条件でほとんど起電力が生じないことから、天然光捕集タンパク質増感効果による光起電力発生を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) タンパク質開発に関しては、a)に関しては引き続き開発調整を継続する予定であり、b)に関しても開発を着手している。 2) 電池作成に関しては、a) 天然タンパク質を増感物質に用いた光電池に関してはすでに作成できており、b) 天然タンパク質を増感物質に用いた光電池の光応答測定に関しても、測定を実現している。
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今後の研究の推進方策 |
1) a) 構築したラン藻の培養システムを用いて、クリプト藻とラン藻の大量培養を開始する。得られる大量(数十グラムオーダー)の藻から、遠心分離や超音波破砕によって、タンパク質を抽出・精製する。精製は、塩析法や各種カラムクロマトグラフィー法を用いて、収量と生成物の純度がよい効果的な手順を作成する。b) 天然の酵素と同じように可溶化し、さらにタンパク質分子に複数結合している色素が、すべてタンパク質分子に結合した人工分子の作製法を完成させるために、大腸菌の培養条件の検討と、大腸菌への色素合成酵素群と色素付加酵素群の種類および、遺伝子の制御領域を改変することで、共存における生産効率を変化させ、色素結合効率を最大化する。自己組織化や安定化に関しては、a),b)達成後に着手する。 2) a) 1)で作成調整されたタンパク質試料を用いた増感電池を作成する。光応答特性に応じて、必要に応じて作成条件等のパラメーターや電解液などの最適化に関して検討を行う。 b) 同様に調整タンパク質を用いた光応答特性を測定するとともに、新たに、電流電圧特性測定装置を購入し、電流電圧特性等も測定する予定である。
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