研究課題/領域番号 |
18K05313
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
林 剛介 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40648268)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | タンパク質化学合成 |
研究実績の概要 |
2019年度は、2018年度に開発したDNA scaffold上でのペプチド連結反応を改良することで、より一般的にタンパク質化学合成を行うことのできる方法の開発を行った。 これまでカルボン酸活性化剤を用いて行ってきた連結反応を活性化剤を使用しない方法へと変更した。具体的には、システインとチオエステル間で反応してネイティブなアミド結合を生じるNCLを用いる系の開発を行った。NCL反応には、チオエステル前駆体の合成が必要不可欠となるため新たなチオエステル前駆体の開発に着手した。システイン-プロリン-脱離基の配列を持つペプチドがS-Nアシルシフトを経て高効率にチオエステル前駆体に変換されることに着目し、固相合成上で合成可能な新たな脱離基を探索した。その結果、セリンやトレオニン側鎖の水酸基を主鎖アミド基と環化させてえられる環状イミド構造(オキサゾリジノン構造)が脱離基として優れていることを見出した。具体的には、Fmoc固相合成でC末端側にCPS(orT)-Tle (tert-Leucine)構造を持つペプチドを合成し、その後Ser or Thrの保護基を選択的に脱保護、CDIを用いた環化反応を行うことで目的のCPI(cysteinyl-prolyl-imide)構造を定量的に合成できることを示した。CPI構造のチオエステル前駆体としての機能を評価したところ、S-Nアシルシフト型チオエステル前駆体としては、最も高速・高効率で反応することを明らかにした。CPI構造を用いてヒストンタンパク質の合成に成功しており、本チオエステル前駆体の実用性を示すことが出来た。本研究は、Chemical Science誌へ論文発表しており、複数の国内、国際学会でも報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度は2種類のペプチドをDNA足場上のペプチド連結反応に用いる新たなチオエステル前駆体の開発を行ったが、当初の予定以上に研究が進展し、既存のチオエステル前駆体の機能を上回る構造体の開発ができたため。
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今後の研究の推進方策 |
開発したCPI構造を持つチオエステル前駆体の機能をより向上させるため、イミド構造にチアゾリジノン構造を有するものを試す。また、DNAを足場としたペプチド断片の連結反応の最適化も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度にDNAなど比較的高価な試薬などの購入を予定しているため、2019年度の研究費を2020年度へ繰り越した。
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