これまでにトリメチル化リシンをはじめとした修飾アミノ酸残基を含むヒストンH3,H4の化学合成に成功している.また,チイランリンカーを利用したユビキチン化イソペプチドアナログの合成も行っている.その構造の検証のため,天然型イソペプチド構造を有するユビキチン化ヒストンH3の合成を行い,それぞれの構造によって,DNAメチル化酵素Dnmt1の活性が向上するが,天然型イソペプチド構造によるユビキチン化ヒストンH3部分ペプチドは,そのアナログと比べて,修飾部位による活性化の傾向は同じであるものの,天然型イソペプチド構造のほうがその活性化の割合が小さい傾向があった.そのため特定の機能の解明には天然型構造が重要であることが再認識された.また一方で,O-GlcNAc化ヒストンH2Aの合成を行っている.本合成においては,アリールチオエステル,CPE,およびNAC法を用いて,4つのペプチドセグメントをワンポットで縮合した.さらにより簡便な合成法の開発を進めている. 本研究においては,引き続き修飾ヒストンの化学合成,および,より効率的な合成法の開発を進めている.その中で,CPE法での反応機構におけるCys-Pro間のコンフォーメションに着目して,その構造を変えることによって反応部位,反応速度が異なることがわかった.その一部を学会発表し,現在,論文にまとめるための追加実験を行っている.また,クロマチン関連蛋白質であるHP1の半合成を進め,非変性条件下でのライゲーションに成功し(未発表),構造解析に向けて準備を進めている.
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