研究課題/領域番号 |
18K05319
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
麻生 真理子 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (30201891)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 反応性核酸 / 蛋白質 / リジン / 蛍光修飾 |
研究実績の概要 |
本研究課題、ターンオン蛍光を伴う部位特異的リジン修飾、クロスリンク形成と蛋白質研究への応用は1)環境応答型蛍光基を用いた蛋白質修飾と蛍光による蛋白質相互作用検出、2)蛍光を伴うクロスリンク形成反応の開発を行う。1)では、リジン残基を、蛍光ソルバトクロミズムを示す3-メチレンイソインドリン-1-オン誘導体に変換する化合物の合成、得られた蛍光分子の蛍光特性、物性の調査、リジン修飾化合物のオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)への導入、合成した反応性核酸を用いた標的蛋白質DnaAの修飾を行った。今後、蛋白質修飾効率の検討、修飾したDnaAの蛍光、DnaAの相互作用に伴う蛍光変化を精査する。本研究で標的とするほかの蛋白質修飾のための反応性核酸の合成を行い、蛋白質蛍光修飾を検討する。またリジン残基を、励起状態分子内プロトン移動(ESIPT)を介した環境応答型蛍光を示す3-メチレンイソインドリン-1-オン誘導体に変換する化合物を合成した。化合物によるリジン修飾反応を引き続き検討し、その後ODNへの導入、蛋白質修飾について検討を行う。2)に関してはDNA-蛋白質クロスリンク、蛋白質―蛋白質クロスリンクのための反応性核酸合成に必要なリジン修飾化合物の合成を行っている。1) のリジン修飾化合物に分子の接続のための官能基を導入するとクロスリンク形成分子となる。合成完了後はこれをODNへ導入し、蛋白質修飾のための反応性核酸の合成を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)環境応答型蛍光基を用いた蛋白質修飾と相互作用検出 i) リジン修飾によりジメチルアミノ-3-メチレンイソインドリンを形成する化合物の合成に成功した。この化合物を用いたリジン修飾は中性条件下70%程度で進行した。得られた化合物の蛍光はソルバトクロミズムを示し、プロトン性溶媒の誘電率と相関が認められた。溶媒の誘電率が上がるほど蛍光極大波長は長波長シフトし、その強度は減少した。またリジン修飾化合物を、大腸菌DNA複製開始蛋白質DnaAの結合配列を持つオリゴヌクレオチド(ODN)の5‘末端に導入した。合成したODNとDnaAの複合体を形成し365 nmの光で励起したころ、440 nmに極大吸収を持つ蛍光の増加が観測された。この蛍光の精査と共に、修飾したDnaAの相互作用と蛍光変化について検討を行う。 ii)リジン修飾によりESIPTを介した環境応答型蛍光基を形成する化合物を合成した。合成した分子を用いたリジン修飾は、i)の反応に比べ収率が低いため、反応条件の検討を行う。また、分子に存在するフェノール性水酸基の保護がリジン修飾効率改善の可能性があることが示唆された。このため、特定の条件で除去可能な保護基を導入した化合物を用いて、リジン修飾を検討し、脱保護に伴うターンオン蛍光を利用したセンサー等への応用を検討する。 2)蛍光を伴うクロスリンク形成反応の開発 i) のリジン修飾化合物に分子の接続のための官能基を導入するとクロスリンク形成分子となる。現在合成検討の進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い、以下の研究を行う。 1)環境応答型蛍光基を用いた蛋白質修飾と相互作用検出 i)合成に成功したリジン蛍光修飾化合物についてはDnaAの蛍光修飾、修飾効率の精査を行い、相互作用に伴う蛍光変化を検討する。また、研究計画において標的蛋白質としたRibonuclease 修飾のための反応性核酸の合成、修飾蛋白質の機能評価を行う。ii) ESIPTを介した蛍光を示す分子によるリジン修飾化合物の反応性検討、ODNへの導入を行う。2)蛍光を伴うクロスリンクのための化合物の合成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度の物品費交付額が115万円となったため(申請額179万円)、当初予定していたHPLC UV-vis検出器の購入を見送り、反応性核酸調整に必要なLED方式UV照射器コントローラー(207,518円)の購入を行った。この装置の購入理由として、反応性核酸調整にはこれまで用いてきたハンディUVランプを用いた反応は効率が悪いことが判明したためである。そこで光の強度が強く、単一の波長を効率よく照射可能なLED方式照射器コントローラーを購入した。購入した照射器に接続可能な照射ランプを購入すれば、異なる波長でのUV照射が可能となるため、平成31年度に購入予定していた高安定モノクロ光源の代わりとする。
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