ターンオン蛍光を伴う部位特異的リジン修飾、クロスリンク形成と蛋白質研究への応用を進めるため、1)環境応答型蛍光基を用いた蛋白質修飾と相互作用検出、2)蛍光を伴うクロスリンク形成反応の開発、3)物性を改良した蛍光分子の開発について検討を行った。1)では、大腸菌DNA複製開始蛋白質DnaAのDNA結合領域に結合するリジン反応性核酸の合成、ジメチルアミノ(NMe2)基を持つ環境応答型蛍光基によるリジン残基修飾を行った。前年度までの研究で修飾反応液を用いた修飾蛋白質の蛍光測定により核酸が結合した状態に比べ結合しない方が強いという可能性が示唆された。より正確な評価のため、修飾蛋白質の精製、単離を限外ろ過、コバルトレジンにより検討したが、少量の修飾蛋白質の精製は困難であった。またLC-MSを用いた未精製の修飾蛋白質の構造解析もピーク検出が難しいことが分かった。 2)では、前年度までの研究で、クロスリンク形成のためのリンカー部を導入したリジン修飾分子からの環境応答型蛍光を示す修飾体の合成とその評価を行っていた。リンカー部反応後の修飾体の安定性評価のため、NMe2基に隣接するリンカー部にリン酸エステル結合の導入を試みたが、現在のところ成功していない。 3)前年度合成したオレフィン部にフェニル基を導入した修飾体の物性評価を行った。フェニル体の蛍光は無置換体に比べ弱いが、プロトン性溶媒中溶媒の誘電率と蛍光強度が正の相関を示し、水中で最も強い蛍光を示した。これらの特徴は他の修飾体にないものであった。また単離したZ体が光刺激でE体との混合物に異性化することが明らかとなった。今回開発したオレフィン部に置換基を持つ誘導体の合成経路は様々な置換基、機能導入への応用にも期待できる。
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