研究課題/領域番号 |
18K05320
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
加藤 太一郎 鹿児島大学, 理工学域理学系, 助教 (60423901)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ホタル生物発光 / ホタルルシフェラーゼ / チオエステラーゼ / 立体反転 / デラセミ化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、基質のラセミ化を気にすることなく、発光追跡期間が長期間にわたる場合でも定量的かつ再現性の高い測定が可能なホタル生物発光バイオイメージングシステムを構築することである。 ホタル生物発光バイオイメージングは、発光基質D-ルシフェリンを血中投与するだけでほぼ全身に行きわたらせることが可能という手軽さがある一方、生体内で基質が簡単にラセミ化してしまうため、イメージング測定時のルシフェリンの光学純度維持が困難となり、発光の定量性や再現性が担保されないという問題がある。そこで申請者は、ホタル生物発光イメージングにおいて、基質のラセミ化を気にすることなく信頼性の高い発光測定が可能なシステムの構築を目的とした研究を計画した。目標達成のために外来性チオエステラーゼ遺伝子を導入し、標的細胞内に、ホタル体内におけるD-ルシフェリン合成経路を模倣したデラセミ化反応経路を再現することを目指す。 平成30年度はまず、ヒト由来細胞に存在する多くの内在性チオエステラーゼについて酵素学的な特徴づけを行い、デラセミ化反応の進行を阻害する可能性があるか確認を行った。その結果、チオエステラーゼ(ACOT13)遺伝子産物が、L-ルシフェリル-CoA体を非常に高い立体選択性にて特異的に加水分解を行い、デラセミ化反応を阻害していることを確認した。また、ホタルゲノム解析も同時に進めており、アノテーション結果より5種類チオエステラーゼ候補遺伝子を得、大腸菌等でのタンパク質発現を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画当初はホタルゲノム解析より得られたチオエステラーゼ遺伝子産物の機能解析を想定していたが、これらのタンパク質が大腸菌や昆虫細胞、ヒト無細胞翻訳系等の発現システムでは可溶化タンパク質として得られなかったため、培養細胞への導入時期が遅れているため。今年度は、まずデラセミ化に悪影響を与えるACOT遺伝子のノックダウンを試み、細胞機能がどのように変化するのかを検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本申請課題では、ルシフェリン基質の不斉に関係なくD-体L-体いずれからでも効率よく発光するキラルフリー発光細胞を作製すると共に、それをin vivoイメージングに適用可能な基盤技術へと展開することを目指す。平成31年度の具体的な研究計画は以下の通りである。 ゲノム編集技術を用いた内在性チオエステラーゼのノックダウン---ヒト由来細胞には多くの内在性チオエステラーゼが存在しており、その中にデラセミ化反応の進行を阻害するものがあることを初年度の検討で明らかにしている。そこでまず第一に、悪影響を与えるチオエステラーゼ(ACOT13)遺伝子をRNAi技術によってノックダウンした細胞株を作製する。検討に用いる培養細胞は、各種ヒトがん細胞由来のホタルルシフェラーゼ恒常発現細胞株を利用する。その中でも第一候補として、生体深部に位置しエコーなどを用いた検診でも発見されにくく、5年生存率約5%という特に予後および治療成績が悪い膵臓がん細胞を選択する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ホタルゲノム中より見出したチオエステラーゼ遺伝子産物の特徴づけが難航し、当初実験計画にて実施する予定であった、ヒト細胞培養に対するノックダウン実験を進めることができなかったため、それらの経費を次年度に繰り越させていただきました。平成31年度は本実験を行う予定であり、本経費を利用する計画です。
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