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2020 年度 実施状況報告書

人工球状タンパク質超分子を用いたナノスケール相分離の実現とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 18K05324
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

川上 了史  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (60566800)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードタンパク質ナノ粒子 / 自己組織化 / 相分離
研究実績の概要

本研究では、申請者が設計、構築した中空のタンパク質ナノ粒子TIP60について、内側と外側で有機層と水層に分離する相分離材料の構築を検討してきた。本年度ではCOVID-19の影響により、十分な実験が実施できなかったものの、前年度までに達成されていた外部表面をポリマーで修飾する手法をさらに発展させて、TIP60の内側と外側を異なる分子で修飾しわける両面機能化手法を完成させることができた。加えて、両面を異なる分子で修飾できるメカニズムが、TIP60の構造的特徴によるものであることを明らかにした。また、予備的な検討ではあるが、表面をポリマーで修飾した場合には、アルコールのような有機溶媒中で分散させられることが明らかになった。未修飾のTIP60を添加した場合には目視で沈殿が形成されることから、TIP60表面をポリマーで保護することにより、溶媒分子のアクセスが妨げられ結果的に有機層中での変性が進行しにくくなっている可能性が示唆された。一方、TIP60の内部空間の化学修飾では、修飾分子にピレンを用いた場合に、さらに異なる疎水性小分子の内包を検出することができた。特に内部空間に提示したピレンと添加した疎水性化合物の間に相互作用を見出すことができ、実際に内部空間に保持されていることが明らかになった。このとき、光増感剤分子を添加すると、内包できるだけでなく、光応答的に一重項酸素の発生が検出された。興味深いことにピレンによる修飾を行わなかった場合には、このような機能を検出することができず、疎水化による効果が機能の観点からも確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

COVID-19への対応により、実施予定であった多くの実験を進めることができなくなった。それまでに蓄積していた成果として、TIP60内部の疎水化や利用方法の開発については、想定していた以上に進んでいたことから、総合的にはやや遅れているという状況となっている。

今後の研究の推進方策

本来計画していた相分離材料としての応用方法の展開を具体的に検討する。特にTIP60分子表面を高分子でコートする仕組みを構築でき、かつ有機溶媒中でも分散状態を維持できることが示唆されたことから、タンパク質分子としての構造が壊れていないかを検証していく。また内部を疎水化したことにより、光増感剤を内包することに成功したことから、光応答的な酸化触媒としての利用価値があると考えており、本システムを用いた具体的な触媒応用などについても検討していく。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19への対応により、研究時間が大幅に減少することとなり、本来進められるはずの実験が実施できなかった。したがって、本年度では昨年度の計画に含まれていた溶媒中でのTIP60の安定性評価に向けて、計画通りの使用を予定している。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Nanopore-Controlled Dual-Surface Modifications on Artificial Protein Nanocages as Nanocarriers2021

    • 著者名/発表者名
      Nasu Erika、Kawakami Norifumi、Miyamoto Kenji
    • 雑誌名

      ACS Applied Nano Materials

      巻: 4 ページ: 2434~2439

    • DOI

      10.1021/acsanm.0c02972

    • 査読あり
  • [雑誌論文] PET分解酵素の活性を劇的に向上させる方法の開発2020

    • 著者名/発表者名
      川上了史、宮本憲二
    • 雑誌名

      高分子

      巻: 69 ページ: 580~581

  • [学会発表] 中空タンパク質ナノ粒子TIP60への疎水性光増感剤の内包2021

    • 著者名/発表者名
      山下舞佳、川上了史、宮本憲二
    • 学会等名
      日本化学会 第101春季年会、2021年3月
  • [学会発表] 人工タンパク質ナノ粒子TIP60の金属イオン応答性可逆的アセンブル手法の構築2021

    • 著者名/発表者名
      大原直也、川上了史、新井亮一、宮本憲二
    • 学会等名
      日本化学会 第101春季年会、2021年3月
  • [学会発表] 人工タンパク質ナノ粒子“TIP60の表面孔の分子ふるい効果を利用した内外表面の機能化2021

    • 著者名/発表者名
      那須英里圭、川上了史、宮本憲二
    • 学会等名
      日本化学会 第101春季年会、2021年3月
  • [学会発表] 形から入るタンパク質ナノ粒子の設計と機能化2020

    • 著者名/発表者名
      川上了史
    • 学会等名
      SICE分子ロボティクス研究会 第1回オンライン定例研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] Incorporation of Hydrophobic Small Molecules in the Artificial Protein Nanoparticle TIP602020

    • 著者名/発表者名
      Norifumi Kawakami, Maika Yamashita, Kenji Miyamoto
    • 学会等名
      第20回日本蛋白質科学会年会
  • [学会発表] Metal Inducive Assembly of a Newly Designed Protein Cage TIP602020

    • 著者名/発表者名
      Naoya Ohara, Norifumi Kawakami, Kenji Miyamoto
    • 学会等名
      第20回日本蛋白質科学会年会
  • [学会発表] Dual-Surface Functionalization of an Artificial Protein Nanocapsule Based on Molecular Sieving Effect of its Porous Surface2020

    • 著者名/発表者名
      Erika Nasu, Norifumi Kawakami, Kenji Miyamoto
    • 学会等名
      第20回日本蛋白質科学会年会
  • [学会発表] 中空タンパク質ナノ粒子TIP60の内部疎水化と疎水性小分子の内包2020

    • 著者名/発表者名
      山下舞佳、川上了史、宮本憲二
    • 学会等名
      第22回生体触媒化学シンポジウム
  • [図書] 生命金属ダイナミクス2021

    • 著者名/発表者名
      川上了史、宮本憲二
    • 総ページ数
      107~112
    • 出版者
      エヌ・ティー・エス

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公開日: 2021-12-27  

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