多孔質性の中空人工タンパク質ナノ粒子TIP60について、化学修飾による内外表面の疎水化を大きな課題とし、それに向けた化学修飾条件の最適化から研究を実施した。初期にはTIP60の表面の孔をどの程度の大きさの分子が通過できるかを確認するため、両親媒性高分子のPEGによる修飾を行った。その結果、内部表面は分子量10000よりも小さな分子でなければ修飾できないことを見出した。さらに、この仕組みを利用して、外部に高分子量のPEGを提示しつつ、内部に小分子を導入できるヘテロな修飾を実現した。また、外部をPEGで修飾したときに限り、メタノールなどの溶媒に分散させた場合にも沈殿が生じなくなることもわかり、有機溶媒中での安定性が向上している可能性が示唆された。上記の研究から最適化された反応条件を利用して、内部空間を芳香属性化合物であるピレンを修飾したところ、芳香属性の亜鉛フタロシアニンを内包できるようになることを突き止めた。亜鉛フタロシアニンは光増感剤として利用されることが知られているが、水に不溶であるため、水中での光増感剤利用は困難であったが、TIP60に内包した状態では光照射に伴う一重項酸素の発生を間接的にではあるが観察することもできた。最終年度については、内部空間の疎水的環境が修飾分子の置換基の種類で制御できる可能性を検討した。これまで用いた芳香族化合物に加えて、脂肪族性の化合物での修飾を行った。次に溶媒の種類に応じて発光波長が変化するソルバトクロミック分子の内包を検討した。その結果、修飾分子の種類に応じて波長のシフトが起こることが認められ、内部空間の設計ができる可能性が示唆された。
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