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2019 年度 実施状況報告書

生物に必須なポルフィリン環の構築メカニズムの解明:テトラピロールの生成と環化

研究課題

研究課題/領域番号 18K05326
研究機関久留米大学

研究代表者

佐藤 秀明  久留米大学, 医学部, 准教授 (60271996)

研究分担者 杉島 正一  久留米大学, 医学部, 准教授 (30379292)
塚口 舞 (古澤舞)  久留米大学, 医学部, 助教 (40624094)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードポルフィリン生合成 / ヘム生合成 / 結晶構造解析 / 酵素反応機構
研究実績の概要

動物において必須なヘムは8段階の酵素反応により合成される。この経路前半におけるポルフィリン環の構築メカニズムについて理解を深めるため,ヒドロキシメチルビランシンターゼ(HMBS)の反応機構について構造生物学的手法により検討した。ヘム生合成経路の第3段階で働くHMBSは活性部位にジピロメタン補因子をもち,4分子のポルホビリノーゲン(PBG)を順次縮合してヒドロキシメチルビラン(HMB)を合成する。
これまでに我々は,HMBSに基質を加えてカラムクロマトグラフィーで精製すると,補因子に基質が1~4分子だけ連結した反応中間体を分取できることを示した。そして2または3分子の基質を連結した反応中間体(ES2とES3)を調製し,これらの結晶構造解析を実施した。またホロ型またはES2と基質誘導体との複合体を作成し,それらの構造解析も行った。ホロ型とES2で判明した,それぞれの単独と基質誘導体との複合体の両方の構造から,HMBS反応の分子機構は次のように推察できる。まず補因子近傍に基質が結合し,補因子と基質のピロール環が架橋された後,ピロール鎖がピロール1単位分だけ活性部位の奥側にずれる。次に別の基質分子がピロール鎖末端の近傍に結合し,架橋以降の過程を繰り返してヘキサピロール鎖まで伸長する。最後にこれの加水分解でHMBが解離する。こうしてHMB合成は単一の活性部位での縮合反応の繰り返しで進むと考えられる。
一方でES3の結晶化と構造解析にも取り組んできたが,これまでのところES2の構造のみが観察されている。少なくとも結晶化前の溶液試料の質量分析ではES3の存在が確認できたことから,結晶化途中での末端ピロールの解離もしくは結晶中でのピロール鎖末端の揺らぎが原因と思われる。今後,補因子に基質を1または4分子だけ連結した反応中間体の構造も解明して,HMBSの反応機構の全貌を明らかにしたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度もHMBSの反応中間体について,基質類似体との複合体も含めた結晶化と構造解析に取り組んだ。しかし,SPring-8でのX線結晶構造解析に適した酵素反応中間体の結晶を思い通りに作成することが困難であったため,予定通りの進捗とはなっていない。

今後の研究の推進方策

次のような実験を進めて,引き続きテトラピロールの生成と環化の詳細な反応メカニズムについて解明を目指す。
【HMBSによるPBG 4分子からHMB 1分子への縮合過程の解明】 補因子に基質を1, 3あるいは4分子だけ連結した反応中間体(ES1, ES3およびES4),またそれらと基質類似体との複合体についてX線結晶構造解析に取り組む。これまでに得られたホロ型酵素およびES2,またそれぞれと基質類似体との複合体の構造と合わせて,HMBSの詳細な反応機構について考察する。
【ウロポルフィルノーゲンIIIシンターゼ(UROS)によるHMBのD環反転を伴う環化過程の解明】 PBG類似体を共存させたHMBS酵素反応あるいは化学合成でHMB類似体を調製する。これを用いてUROS-HMB類似体複合体の結晶構造を解析し,UROSの基質結合様式を明らかにする。また,得られる立体構造から基質結合に関わるアミノ酸残基や,HMBの環化に必要と考えられるプロトン供与体となるアミノ酸残基を予測する。そのようなアミノ酸残基について変異酵素を作成し,その活性測定から各アミノ酸残基が果たす役割を検討する。これらの実験によりUROSが溶液中で機能する際の基質の結合状態と,反応に必要なプロトン供与体を決定し,UROSによるD環ピロール反転機構の詳細を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

酵素反応中間体について構造解析に必要な結晶の作成が難航したため,SPring-8でのX線回折実験ができなかった。また新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に伴って,参加を予定していた学会の現地での開催がキャンセルされた。このようなことから,構造解析のための測定実験や学会参加の回数が見込みよりも少なくなったため,次年度使用額が生じた。
この次年度使用額は当該年度以降分の助成金と合わせて,器具や試薬などの消耗品費,測定実験や学会参加の旅費,論文や学会での成果発表の経費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Functional diversification of two bilin reductases for light perception and harvesting in unique cyanobacterium Acaryochloris marina MBIC 110172020

    • 著者名/発表者名
      Miyake Keita、Fushimi Keiji、Kashimoto Tomonori、Maeda Kaisei、Ni‐Ni‐Win、Kimura Hiroyuki、Sugishima Masakazu、Ikeuchi Masahiko、Narikawa Rei
    • 雑誌名

      The FEBS Journal

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1111/febs.15230

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Bilin-metabolizing enzymes: site-specific reductions catalyzed by two different type of enzymes2019

    • 著者名/発表者名
      Sugishima Masakazu、Wada Kei、Unno Masaki、Fukuyama Keiichi
    • 雑誌名

      Current Opinion in Structural Biology

      巻: 59 ページ: 73~80

    • DOI

      10.1016/j.sbi.2019.03.005

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Coupling of Redox and Structural States in Cytochrome P450 Reductase Studied by Molecular Dynamics Simulation2019

    • 著者名/発表者名
      Iijima Mikuru、Ohnuki Jun、Sato Takato、Sugishima Masakazu、Takano Mitsunori
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 9 ページ: 9341

    • DOI

      10.1038/s41598-019-45690-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Crystal structure of phytochromobilin synthase in complex with biliverdin IXα, a key enzyme in the biosynthesis of phytochrome2019

    • 著者名/発表者名
      Sugishima Masakazu、Wada Kei、Fukuyama Keiichi、Yamamoto Ken
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 295 ページ: 771~782

    • DOI

      10.1074/jbc.RA119.011431

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ヒドロキシメチルビラン合成酵素の反応中間体と基質誘導体との複合体の結晶構造解析2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤 秀明,杉島 正一,塚口 舞,増子 隆博,小俣 義明,和田 啓,久枝 良雄,山本 健
    • 学会等名
      2019年度日本生化学会九州支部例会
  • [学会発表] フィトクロム発色団合成酵素のX線結晶構造解析2019

    • 著者名/発表者名
      杉島 正一,和田 啓,山本 健
    • 学会等名
      2019年度日本生化学会九州支部例会
  • [学会発表] 基質誘導体を結合したヒト由来ヒドロキシメチルビランシンターゼ反応中間体の結晶構造解析2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤 秀明,杉島 正一,塚口 舞,増子 隆博,小俣 義明,和田 啓,久枝 良雄,山本 健
    • 学会等名
      第19回日本蛋白質科学会年会 第71回日本細胞生物学会大会 合同年次大会
  • [学会発表] 基質誘導体を結合したヒドロキシメチルビランシンターゼ反応中間体の構造解析2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤 秀明,杉島 正一,塚口 舞,増子 隆博,小俣 義明,和田 啓,久枝 良雄,山本 健
    • 学会等名
      第43回蛋白質と酵素の構造と機能に関する九州シンポジウム
  • [学会発表] フィトクロモビリン合成酵素の酵素反応と立体構造2019

    • 著者名/発表者名
      杉島 正一,和田 啓,山本 健
    • 学会等名
      第43回蛋白質と酵素の構造と機能に関する九州シンポジウム
  • [学会発表] ヘム生合成経路におけるピロール結合反応の分子機構2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤 秀明
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
  • [学会発表] ヘム分解酵素HO-1によるCOとO2の厳密な識別機構2019

    • 著者名/発表者名
      杉島 正一
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
  • [学会発表] 赤色光受容体フィトクロムの光受容色素合成に必須な酵素の立体構造と機能2019

    • 著者名/発表者名
      杉島 正一,和田 啓,福山 恵一,山本 健
    • 学会等名
      日本結晶学会令和元年(2019年)度年会
  • [備考] 久留米大学研究者紹介:佐藤秀明

    • URL

      http://research.kurume-u.ac.jp/data.php?scode=54025632885110

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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