医薬品および候補化合物の標的分子同定は、作用機構の解明に向けた第一ステップであり、また近年の創薬研究においては不可欠である。親和性と化学プローブを用いた標的タンパク質探索法が最近多用されるようになってきたが、低発現タンパク質、低親和性タンパク質や膜タンパク質の同定は未だに困難であり、またタンパク質探索の網羅性が低いという技術的課題が残る。本研究では、金ナノ粒子を新規なプローブ基盤として利用することで、従来の分子プローブでは不可能だった効率的タンパク質ラベル化反応の開発を目指した。また、化合物の希少性や構造の複雑性によりこれまでプローブ化が困難であった天然物リガンドに対して、簡便にプローブへ導入し、標的タンパク質のラベル化と濃縮精製を可能とする一般性の高い技術の確立を目指した。R2年度においては、R1年度に合成したモデル系生物活性分子リガンドと種々のラベル化剤を金ナノ粒子に修飾したアフィニティーラベリングプローブを、複数の既知標的タンパク質を用いて機能解析を実施した。その結果、アフィニティーラベリングの反応効率と選択性が共に優れた求電子基が見いだされた。一方、フォトアフィニティープローブ前駆体としてアジド修飾光反応性金ナノ粒子を新たに設計・合成し、リガンドのアルキン体をクリックケミストリーにより一工程でプローブ化する方法を確立した。このプローブをフォトアフィニティーラベリングへ応用した結果、細胞抽出液より内因性標的タンパク質の検出に成功した。
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