種々の渦鞭毛藻が生産する、分子量が1000を超える二次代謝産物のさらなる探索と構造解析を行った。 沖縄県石垣島産渦鞭毛藻Amphidinium sp.から、分子量1350から2250の化合物をさらに4種類見出し、単離することに成功した。そのうち、分子量2178と2229の2種の化合物の平面構造は、MS/MS分析から推定することができた。両者は、この渦鞭毛藻由来長鎖ポリオール化合物としては初めて、炭素鎖末端の一方の直鎖構造が異なる化合物であった。 同じ渦鞭毛藻由来の新規化合物amdigenol Dの構造解析をさらに実施した。NMRスペクトルにより、amdigenol Dの環状部分の相対立体配置を解析することができた。一方、化合物の分解断片の解析から立体配置決定を行うため、Grubbs触媒を用いたジオール開裂反応により化学分解を行った。分解反応の進行はLC-MS分析により数種類の分解断片の生成を確認できたものの、NMRスペクトル等で相対および絶対立体配置の決定を行うだけの物質量を得ることができなかった。分解反応の反応箇所が分子内に複数存在するため、複雑な生成物の混合物を与える結果となってしまった。 沖縄県備瀬崎産渦鞭毛藻Symbiodinium sp.(NIES-2638)の生産する二次代謝産物のうち、水と有機溶媒による分配操作で水に易溶な化合物群の画分に、分子量2000を超える長鎖ポリオール化合物と思われる複数の物質の存在を見出した。特に、そのうちの一種は、分子量3000を超える、非常に巨大な長鎖ポリオール化合物であることが判明した。それらの分離手法としては、逆相およびゲルろ過クロマトグラフィーが有効であったが、イオン交換クロマトグラフィーでは良い分離条件を見出せなかった。
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