研究課題/領域番号 |
18K05334
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野村 紀通 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10314246)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膜タンパク質 / 創薬ターゲット / 中分子ペプチド / ファージディスプレイ / X線結晶構造解析 / クライオ電子顕微鏡単粒子解析 |
研究実績の概要 |
がん、高血圧、慢性炎症など種々の疾病に対する医薬品の分子標的の多くは膜タンパク質である。その構造解析の難度は依然として高いため、現時点で構造ベースの創薬研究の進展は限定的である。これまで申請者は膜タンパク質に抗体フラグメントを結合させて結晶化を促進するという独自技術を開発し、X線結晶構造解析を推進してきた。本研究では、膜タンパク質の機能を制御する中分子アプタマーの創出とその構造学的検証に有用な新しい方法論の確立を目指している。 本年度は立体的束縛を有する安定なペプチド分子骨格 (50-90残基) を基盤として複数の末端ループの配列と長さを多様化した合成ライブラリーを作製した。具体的には分子内に多数のジスルフィド結合が架橋され強い立体的束縛 のある安定な中分子ペプチド骨格をベースとして、その末端ループの配列と長さを多様化した中分子母集団を人工合成し、ファージディスプレイ系ライブラリーを作製した。マラリア原虫・糖輸送体 (PfHT)や哺乳類・胆汁酸輸送体 (NTCP)等の複数の創薬標的膜タンパク質について,(1) 界面活性剤ミセルに覆われた状態の精製試料,(2)脂質ナノディスクに再構成した状態の試料等を作り、さらにパニングにおいて独自技術を導入することによって、これらの膜タンパク質ターゲットに対して特異的に認識し結合するファージ集団を4-12サイクル程度の選抜を経て、取得した。選抜過程でのファージ集団の優占度の遷移をシーケンス解析にて評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
立体的束縛を有する安定なペプチド分子骨格 (50-90残基) を基盤として複数の末端ループの配列と長さを多様化した合成ライブラリーを実際に作製して、異なる複数の膜タンパク質ターゲットに対して中分子バインダーが取得可能であるというフィージビリティーを検証することができたため、二年度目の目標は概ね達成できて いると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
膜タンパク質/中分子アプタマー複合体を精製し、それを抗原として用いて結晶化促進ツールとしての構造認識抗体を作製する。Fab抗体断片の添加により、膜タンパク質/中分子アプタマー/Fabの三者複合体の精製品を調製し、この試料を用いて脂質キュービック相結晶化法により結晶を作製後、放射光マイクロフォーカスビームにより回折データを収集する。膜タンパク質/中分子アプタマー/Fab複合体の立体構造(分解能2.5-3Å)を決定する。中分子アプタマーのファーマコフォア同定を経て、作用機序の構造学的基盤を解明する。結晶化がうまくいかない試料についてはクライオ電子顕微鏡単粒子解析による構造解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では,本年度にX線結晶構造解析の回折データ測定のためSPring-8への出張を見込んでいたが、創薬ターゲットタンパク質ー中分子バインダー複合体 の結晶がまだ生成していないことから、その出張計画を中止した。そのため出張経費を使用しなかったために次年度使用額が生じた。当該経費は、次年度以降に 当初計画通りのSPring-8出張費として使用する計画である。
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