研究課題/領域番号 |
18K05336
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
倉本 誠 愛媛大学, 学術支援センター, 准教授 (50291505)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生物活性物質 / 構造解析 / 海洋生物 / デプシペプチド |
研究実績の概要 |
本研究では愛媛県の沿岸に生息する海洋生物を対象として、生物活性物質の探索研究を進めている。佐田岬の周辺は海流の影響が大きく、豊富な海産資源が得られるが刺し網漁で水揚げされる中には商品とならないものが多い。そのような未利用の資源の対象として探索研究を進めている。研究開始以来、生体試料の採集は佐田岬の三崎漁業協同組合の漁業者の協力により実施してきた。 本年度は愛媛県内の感染症の拡大のため、春期(4-5月)秋期(9-10月)共に試料の採集を行うことができなかった。そのため、前年に採集し冷凍保存しているた海洋生物および抽出液を使用して研究を展開した。それぞれの生体試料についてアルコール抽出液を作成し物質の探索研究に供した。活性試験では細胞毒性を示す抽出液が確認されたが、一次分離とHPLCの解析からイワカイメン以外の抽出液にもカリクリン類の存在が確認された。これ以外の内容を下に示す。 今年度はこれまでに解析を進めてきたカリクリンの新規イミダゾール類縁体について、NMR解析を中心に立体化学の検討を進めた。ディスコキオライド類については、論文既報の化合物であったが、誘導体化せずに単離する手法が確立できた。さらに微量成分の分離と詳細な解析により、さらに2種類の類縁体を明らかに出来た。また、単結晶の作成条件が明らかとなったことから、X線結晶構造解析を実施し、全立体化学の解明を達成した。特に良好なFlackパラメータから絶対立体化学についても推測できている。この結果については、現在論文作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、感染症の拡大によって試料の採集を行うことができなかった。そのため、予定していた年度ごとの含有二次代謝産物の比較を行うことができていない。また、新試料の採集を行うことができなかったため、前年に採集し、冷凍保存していた試料を用いて研究を遂行した。年度の前半は学内への学生の立ち入り禁止と教員に対しての研究の制限がかかり、研究の遂行を行うことができなかった。そのため、予定していた研究を実施することができなかった。そのため、少量の抽出液を用いてHPLC分析やこれまで分離済みの試料について詳細な解析を中心に進めた。単結晶を得て立体化学の解析なども実施して、新しい結果も得ているが、全体的に研究の進捗は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度においても、感染症の影響により新資料の採集は困難が予想されている。そこで、冷凍保存しているサンプルを中心に新しい探索を展開する。現在までにHeLa細胞に対して活性を示さない抽出液や生体は、分離を行わずそのままで保管している物もある。そのような試料についても分析を行ってゆく、活性試験だけでなくNMRやMS等のスペクトルに注目した分離を展開してゆく。既に分離も開始しており、脂肪酸、テルペノイド、ペプチド類などを確認している。これらについて更なる分析を実施してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に用いる試料採集は漁業協同組合の協力により実施してきた。しかし、今年度は感染症の拡大により当該地域への移動と採集が出来なかった。そのため、目的の研究の遂行が困難であった。また、期間中に研究施設への立入が制限された。そのため、既に単離した物質の詳細な解析を中心に進めた。さらに予定していた国際学会が延期になったことが当初予算との齟齬が生じた理由である。 今年度は当該地域における採集を計画している。しかしながら、年度当初より冷凍保存しているサンプルを中心に探索研究を展開することで、採集が困難であった場合にも対応してゆく。
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