研究課題/領域番号 |
18K05338
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
石川 裕一 横浜市立大学, 理学部, 准教授 (40348826)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 構造活性相関 / ケミカルバイオロジー / 天然有機化合物 / シグナル伝達 / タエペエニンD / ヘッジホッグシグナル / Wntシグナル |
研究実績の概要 |
ヘッジホッグ(Hh)およびウィント(Wnt)シグナル伝達経路は、重要な生命現象に関わっているものの、その詳細なメカニズムに対する基礎研究に未解明な部分が残されている。また、これらの阻害物質は、新たな抗がん剤として注目されているが、現在までに実用化された化合物はない。阻害物質Taepeenin D、Scopadulciolは、生物学的ツールとしての活用や、新規抗がん剤リード化合物としての応用が期待できる。しかしながら今までに、これらの化合物は、構造活性相関研究がほとんど進んでいない。そこで、Taepeenin D、Scopadulciolおよび誘導体の合成を行い、それぞれの活性発現に必要な最小基本構造(活性中核構造)を解明することで、新規生物学的ツールや新規抗がん剤リード化合物の開発へと応用することを目指した。 当該年度においては、本研究の基盤となるHhシグナル伝達経路阻害剤であるTaepeenin DおよびWntシグナル伝達経路阻害剤Scopadulciolの合成経路を確立することを目指した。 Taepeenin Dの合成にあたり、原料として容易に入手可能なWieland-Miescher ketone(WMK)を採用することで、大量合成に耐えうる合成経路を確立することとし、得られたWMKより、既知の方法によってタエペエニンDに導くための官能基化を試みた。鍵反応となる酸素官能基化について検討を行い、収率の大幅な改善に成功した。また、その特徴的な芳香環部分についても、その構築に成功した。 Scopadulciolの合成についても、原料としてWMKを採用し、合成の効率化を図った。今年度はその特徴的な縮環部分構造の構築を目指し、モデル化合物を用いてその検討を行なった。しかしながら、現在までのところ、その構築には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までのところ、目的とする天然有機化合物Taepeenin DおよびScopadulciolの合成経路を確立することは達成できていない。これは、原料であるWieland-Miescher ketoneより導かれる中間体合成への合成経路が長く、収率等に問題があるためであり、今後の検討によって克服する必要があるものと考える。しかしながら、Taepeenin Dについては、それらの問題があるものの、その全合成まで残り数段階のところまで進捗しており、今年度の早い段階での合成達成が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的となる、天然有機化合物Taepeenin DおよびScopadulciolの合成を早急に達成し、つづく、多様な誘導体合成へと展開することを目指すものとする。 それぞれの化合物を合成したのち、さまざまな誘導体の生物活性の評価から得られる、構造活性相関に関する情報を得ることで、当初の目的である活性発現に必要な最小部分構造の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より、進捗がやや遅れていることから、実験に用いる試薬に対する支出に差異が生じたものである。次年度は、早急に目的となる化合物の合成を行うために、研究期間の早期の段階で、それら実験に関わる支出が必要となると考えられる。
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