昨年度に引き続き、がん細胞のリプログラミング機構に着目し、[1]がん細胞におけるキヌレニン産生阻害による免疫寛容抑制剤と、[2]がん細胞に特有な栄養代謝機構を阻害する物質の探索と構造決定、機能解明を目指した研究に着手した。 [1]については、沖縄県石垣市産シアノバクテリアOkeania sp.のMeOH抽出物より単離したキヌレニン産生阻害活性を有する新規環状ペプチドKNP-1について、昨年度に引き続き、βアミノ酸部位の2か所の不斉点の立体化学の決定を試みた。KNP-1由来のβアミノ酸と合成した。2種類のジアステレオマーをMarfey誘導体化し、それらのHPLCにおける保持時間の比較により、2か所の不斉点の立体化学を決定した。この結果を踏まえ、KNP-1の9か所の不斉点の全立体化学の決定を完了した。 [2]についても、昨年度に引き続き、グルタミン含有条件選択的にがん細胞の増殖を阻害する物質の探索により得られたペプチド性化合物の構造解析を試みた。昨年度、十分な量が得られなかったため、十分な構造解析ができなかったことを踏まえ、新たに生産生物であるシアノバクテリアの採集を行い、精製による化合物の確保を試みた。新谷採集したサンプルからの確保を完了し、各種二次元NMRのスペクトル解析に供することができた。現在は得られた化合物についてのスペクトルの解析を試みている。 研究期間全体を通じて、[1]がん細胞におけるキヌレニン産生阻害による新たな免疫寛容抑制剤候補物質の獲得と構造解明を達成し、[2]がん細胞に特有な栄養代謝機構を阻害する有用物質の獲得と、構造・機能解明に繋がる重要な成果を得ることができた。
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