研究課題/領域番号 |
18K05342
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
新倉 貴子 上智大学, 理工学部, 教授 (10301491)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ペプチド / 生理活性分子 / 神経伝達物質 / 認知機能 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病の病態改善作用を持つペプチド因子ヒューマニンは、分泌性ペプチドで受容体を介して作用し、神経細胞死を抑制する。近年、ヒューマニンがアルツハイマー病病態のみならず広く生理的機能の調節に関わることを示唆する報告が増えてきた。加えて、血液中のヒューマニン量が加齢とともに減少することがヒトとげっ歯類で確認され、加齢に関連する疾患や老化そのものとの関連性が注目されている。本研究では、ヒューマニンが『抗老化因子』のひとつであることを検証することを目的としている。 まず、ヒューマニンが脳機能に与える影響を理解するため、ヒューマニンを投与したのちの脳内の神経伝達物質の量をマイクロダイアリシス法で調べた。その結果、記憶に関与する脳領域である海馬におけるアセチルコリン等の複数の神経伝達物質の量が、高活性型のヒューマニン誘導体の投与により一過性に増加することが明らかとなった。(神経化学会年会およびSociety for Neuroscience Annual Meetingで発表)また、脳内のシグナル分子等を生化学的に解析し、ヒューマニンの作用はアセチルコリン分解抑制作用を持つドネペジルとは異なることなどが示唆された。さらに、老齢マウスで高活性型ヒューマニンの作用を検討したところ、若齢動物のような急性の反応が認められないことがわかった。 また、薬物による軽度認知機能低下モデルに対するヒューマニンの効果について検討した。昨年度に条件検討をしたモデルで、高活性型のヒューマニン誘導体が認知機能を改善させることがわかった。(Society for Neuroscience Annual Meetingで発表)さらに、その脳を解析することでヒューマニンが薬物で誘導される神経炎症も抑制することがわかった。 さらに、培養細胞を用いたモデルでヒューマニンが細胞老化を抑制する作用を示す結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳内の神経伝達物質に対するヒューマニンの効果については、計画に沿った実験を行うことで、その効果とともに脳内の分子の変化に関する知見も得ることができ、作用機序の解析を進めることができた。 軽度認知機能低下のモデルを用いて、ヒューマニンの効果について複数の認知機能試験による評価とともに神経炎症の解析も行い、十分な結果を得ることができた。また、in vitroのモデルでの解析も進んだ。 これらのことから、概ね計画通りに進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
脳内環境に対するヒューマニンの効果については、その作用機序を分子レベルで理解するための解析をさらに進める。老化モデルについては、行動試験において動物の個体差の影響を受けやすいため、より精度の高い結果が得られる実験系を導入し検討を進めている。また、培養細胞を用いたin vitroの実験系でもヒューマニンが効果を有する可能性が示唆されたため、その作用についても分子機序などの解析を進める。
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