研究課題
アルツハイマー病の病態改善作用を持つペプチド因子ヒューマニンは、分泌性ペプチドで受容体を介して作用し、神経細胞死を抑制する。近年の研究で、ヒューマニンはアルツハイマー病病態以外の脳の病態や糖尿病などの疾患を改善する作用があることがわかってきている。加えて、血液中のヒューマニン量が加齢とともに減少することがヒトとげっ歯類で確認され、加齢に関連する疾患や老化そのものとの関連性が注目されている。本研究では、ヒューマニンが『抗老化因子』のひとつであることを検証することを目的とし、特に脳における生理的機能に着目して解析を進めた。まず、高活性型のヒューマニン誘導体を用いて、若齢マウスでは記憶に関与する脳領域である海馬での神経伝達物質の量がヒューマニン投与により一過性に増加すること、マウスの認知機能を促進させることが明らかとなった。これらの作用について、神経細胞モデルでのニューマニンによる神経伝達物質の分泌についての検討したところ、高活性型ヒューマニンがその分泌を促進すること、受容体非結合型のヒューマニン誘導体ではその効果がないことを確認した。最終年度では、脳内環境に対するヒューマニンの効果について、in vitroの実験系を用いて作用機序を分子レベルで理解するための解析を進めた。神経伝達物質の分泌機構をアンペロメトリー法で解析したところ、ヒューマニンにより調節性分泌が促進されることがわかった。また、細胞レベルでの老化に対するヒューマニンの作用の検討では、培養細胞を用いた薬物誘導性の老化をヒューマニンが抑制することを確認した。さらに初代神経細胞の自然老化についてもその作用を検証した。
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Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects
巻: 1866 ページ: 130024~130024
10.1016/j.bbagen.2021.130024