研究課題
活性窒素(RNS)による中枢神経細胞傷害は、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患との関連性が知られている。前年度までの研究で、RNSによる細胞傷害から細胞を保護する新規化合物pestalotioquinol A(pesA)を見出した。pesAは、RNSであるペルオキシナイトライト供与体SIN-1による細胞傷害から、神経細胞に分化したPC12細胞を保護した。さらに、pesAの細胞保護活性はSIN-1やNOR-3などのRNSによる細胞傷害特異的であり、過酸化水素などの活性酸素種に対しては保護効果を示さないことを明らかにした。次に、pesAが細胞種に対して選択性を示すか検討した。まず、未分化PC12細胞を用いて細胞保護活性試験を行った。その結果、pesAは未分化PC12細胞においても細胞保護作用を示した。次に、神経細胞であるヒト神経芽細胞腫SH-SY5Yおよびラット胎子大脳皮質初代培養細胞を用いて、神経細胞保護活性試験を行った。その結果、pesAはこれらの細胞では神経細胞保護作用を示さなかった。次に、神経細胞ではないヒト乳腺がんMDA-MB-231およびマウス線維芽細胞NIH/3T3を用いて、細胞保護活性試験を行った。その結果、pesAはこれらの細胞においても細胞保護作用を示さなかった。これらの結果から、pesAはPC12細胞特異的に保護作用を示すことが示唆された。一方、pesA以外の細胞保護物質を真菌代謝産物から探索した。その結果、citreoviridin、pyrenophorolなどがヒット化合物として得られた。これらの化合物は、pesAと同様にSIN-1による細胞傷害から分化PC12細胞を保護した。
2: おおむね順調に進展している
神経保護活性を示す複数の化合物を得ることが出来た。この中でpestalotioquinol Aは活性窒素種に特異性を示すだけでなく、細胞種に対しても特異性を示すことが明らかになった。
今後はpestalotioquinol Aに焦点を絞り解析を進める。直接結合するタンパク質の解析など作用機序解析を進める。
コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言により、研究活動に遅れが生じたため。
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https://lab-navi.azabu-u.ac.jp/v-01-chemi/