研究課題/領域番号 |
18K05345
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
石渡 明弘 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (70342748)
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研究分担者 |
張 恵平 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 研究員 (10462706) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 合成糖鎖 / 酵素 / 糖鎖-タンパク質複合体 / NMR 相互作用解析 |
研究実績の概要 |
本年度は研究組織の変更にともない、エンド型アラビナン分解酵素の相互作用解析のため、基質の量的供給を考慮した合成を行った。まず、エンド型アラビナン分解酵素の活性中心残基の変異体と合成九糖基質の結晶構造解析へ展開し、基質結合サイトとして酵素活性中心の確認を行い、さらに新規糖認識部位を見出すに至った。また、天然基質の酵素分解物のNMRおよび質量分析などを進め、詳細な分解生成物の構造解析を合成物と比較しつつ進めた。 エキソ型アラビナン分解酵素の口腔内細菌由来類縁体酵素 (GH172) による分解系の構造解析などから想定外の二糖閉環構造を同定し、さらに予想に反した可逆過程も見出し、その生物学的な生存競争、共生に関する重要な役割についても考察するに至った。さらに、アラビナン非還元末端β-D-Araf構造を切断する新規酵素の反応解析をPNP β-D-Araf、および、合成22糖基質などを用いて行い、基質特異性および保持型機構を確認した。 また、植物糖タンパク質の翻訳後修飾糖鎖構造の一つであるアラビノオリゴ糖を分解するビフィズス菌由来の加水分解酵素HypBA1およびホモローグの機能解析をすすめた。化学合成したPNP β-L-Araf基質,シクロフェリトール型およびハロアセトアミド型阻害剤との共結晶解析などによる求核性残基の同定に至った。 また、アラビアガムの多糖成分の分解を担うビフィズス菌由来の新規酵素の基質及び分解生成物の合成及びNMR解析を行い、新規ガラクトシルアラビノフラノシド二糖加水分解酵素、新規アラビノフラノシド加水分解酵素を見いだした。 さらに、基質アラビナン合成に応用可能と考えられる糖鎖合成に関して、温和なルイス酸 (ZnI2) を用いた1,2-cis 選択的グリコシドの形成を見出し、計算化学を取り入れ反応機構を推察した。植物単純多糖や複合糖質糖鎖の構造モチーフの合成に展開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、引き続くコロナ渦での自粛状況もあり、年間を通して思うように研究が進められず、また、国際学会の開催などが延期されたことがひとつの大きな理由である。これまでの成果も国際学会などでの報告を行う計画であり、その参加費用として使用したいと、考えている。また本年度はNMR、質量分析による構造解析を、研究組織変更に伴い代表者が進める予定で考えており、そのための高磁場測定や高分解能測定の受益者負担費として引き続き使用したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本申請では、『合成糖鎖-タンパク質複合体のNMR手法による酵素基質切断部位解析』をテーマに取り上げ、ミコバクテリアの細胞壁複合糖質の合成化学とNMRを含めた各種構造解析手法にて、多糖の結合状態を確認しようと計画している。昨年度までに引き続き、分析・測定に関しては、研究代表者が合成を達成しているまたは合成する糖誘導体と連携研究者より調達予定の実際の結核菌由来endo/exo型酵素およびその変異体を用いた、合成糖鎖基質群との相互作用解析を行い、切断位置特異性についての構造化学的知見を得る計画である。アラビナンは糖残基が単一なオリゴ糖であるので、構造解析はより困難になると予想しているが、その際は分岐構造などを導入した主鎖を区別できるプローブの利用などで対応する。結晶構造解析より得られた構造情報をもちいた分子モデリングでの活性サイトおよび新規結合サイトの検証も期間内に進めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
延長後に予定していた、最新の研究成果の発表が進められず、特に、国際学会などがZoom開催されたことが大きな理由の一つである。また、組織変更もあり2年以上のコロナ禍の影響で思うように研究が進められず、細かな対応を模索しながら進めている現状であり、予定の変更をせざるをえなかったのも原因の一つである。令和4年度、再度成果を国際学会などでの報告を行う計画であり、すでにZoom開催となってしまったが、その参加費用として使用したいと考えている。また本年度もNMRによる構造解析を、昨年度同様に研究組織変更に伴い代表者が進めるが、さらに専門家への依頼分析にて高磁場測定することを考えており、そのための測定の受益者負担費として使用したいと考えている。
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