研究課題
日本固有種であるモリアオガエルの際立った特徴は、その産卵形態である。メスは、水面にせり出した木の枝に卵塊(泡巣)を生みつける。メスの輸卵管から分泌された分泌液を泡立てて作る泡巣にメスは産卵し、オスはその卵塊に対して精子を注入し受精が完了する。泡巣の中には数百個の卵が詰まり、日時の経過と共に泡巣表面が乾燥し、シート状の殻に変化する。殻のおかげで泡巣の内部は一定温度・湿度の泡状に保たれ、孵化する。孵化したオタマジャクシは、泡巣を餌として泡巣中で成熟する。泡巣の謎は、その泡状形体を数週間もの長期間保持する事である。つまり泡巣は、シェルター・孵卵器・保育器・ゆりかご・母乳でもある。研究申請者はモリアオガエルが産卵時に形成する泡巣の特異的な性質・謎に注目した。(i)泡巣の主要構成成分は何なのか?(ii)泡巣に微生物等の感染・侵入を防ぐ、特殊能力が備わっているのか?(iii)なぜ長期間、泡巣として泡状形体を保持しているのか?(iv)泡巣の保湿・恒温・酸素供給を維持している機能の源泉は?そこで生化学的手法・質量分析法・次世代シーケンサー等の解析手法を駆使したところ、泡巣中に少なくとも22種類の新規タンパク質が存在し、それらのアミノ酸・遺伝子配列の解読に成功した。相同性検索の結果、22種類のタンパク質は、「受精・ストレス・抗炎症関連」(活性酸素分解酵素・色素タンパク質・プロテアーゼインヒビター等)、「抗菌・抗ウイルス関連」(抗菌タンパク質・RNA分解酵素等)、「保湿・潤滑・細胞保護・構造体維持関連」(卵黄膜外層膜タンパク質・ムチン・糖タンパク質・糖タンパク質結合蛋白質・ケラチン結合蛋白質等)に類似・分類できる事が判明した。また還元剤を用いた実験から、泡巣の形成にはジスルフィド結合(R-S-S-R’結合)が重要な働きを担っている事を明らかにした。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 3件) 備考 (1件)
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