インフルエンザウイルス等のRNAウイルスは、突然変異を引き起こしやすく頻繁に連続抗原変異を生じる。それが迅速な診断や適切な予防を妨げ、流行が繰り返される主因となっている。そこで、本研究では、新型ウイルスの出現やその年の流行型を正確かつ初期に察知・診断する方法論を確立することを目的として、独自開発した遺伝子等温簡便検出法であるSATIC(signal amplification by ternary initiation complexes)法の反応系の改良を検討した。SATIC法では、陽性反応でグアニン四重鎖(G4)が生成されるが、これまでG4チオフラビンT(ThT)誘導体で蛍光染色することでシグナル検出を行ってきた。さらに磁気ビーズ等を用いることで、ウイルスRNAをビーズの蛍光発光やビーズの凝集により感度良く簡便に検出する系を構築した。今般の新型コロナによるパンデミックを受け、これらの方法論の応用に取り組み、新型コロナ感染者の検体(唾液や咽頭ぬぐい液など)によるウイルスRNAの特異検出を検証した。また、検出に関わるすべての試薬を階層構造の中に埋め込むことで、Reday-to-Useの試薬キット(プロトタイプ)を開発した。この検出反応系では37℃で20分ほどの振とうを要するが、磁気ビーズの特性を利用して、電磁コイル中で反応させることにより、機械的な振とうを要さないプロト型の装置を開発した。
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