研究課題/領域番号 |
18K05348
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
高橋 剛 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (90345380)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オフターゲットタンパク質 / ドラッグ・リポジショニング / βラクタマーゼ / NanoLucルシフェラーゼ |
研究実績の概要 |
薬剤が作用する本来の標的以外のオフターゲット分子を見つけ出すことは、副作用の理解のみならず、異なる作用機序を示す薬剤としての利用(ドラッグ・リポジショニング)も期待できる。申請者はこれまでに、化合物-タンパク質間相互作用を酵素活性を指標として読み出す方法(Interaction-Dependent Native Chemical Ligation and Enzyme Reconstitution; IDNCL-ER)を開発してきている。本研究では、このIDNCL-ER法や、タンパク質トランススプライシング(PTS)を利用した相互作用検出系を用いて、薬剤や薬剤候補化合物が相互作用するタンパク質を網羅的に探索する方法の開発を目的とした。 令和元年度は主に、PTS法を利用して、βラクタマーゼ活性を指標として薬剤-タンパク質間相互作用を検出する系の開発にも取り組んだ。βラクタマーゼは、βラクタム系抗生物質を分解する酵素であり、これを検出酵素として用いることができれば、抗生物質耐性を指標としてオフターゲットタンパク質の探索ができるものと期待した。実際に、当研究室で開発した分割インテインDnaE変異体を用いて、ペプチド-タンパク質間の相互作用に依存してβラクタマーゼ活性が生成する系の開発を試みた。 モデル系として、リン酸化ペプチドとリン酸化ペプチドと相互作用するSrc SH2タンパク質を用い、ペプチド-タンパク質間の相互作用に依存したβラクタマーゼ活性の生成について検討した。リン酸化ペプチドの濃度が増大すると、酵素活性が増大したことから、相互作用に依存してインテイン断片が近づき、それにより、PTS反応が進行することで、活性型のβラクタマーゼが生成することが分かった。 現在、大腸菌やグラム陽性細菌を用いた系で、薬剤-タンパク質間の相互作用に依存した活性型βラクタマーゼの産生および、それによる抗生物質耐性の獲得について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年は予定通り、βラクタマーゼ活性を指標とした相互作用検出系の構築を行うことができた。以上から、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、引き続き、βラクタマーゼ活性を指標にした相互作用検出系について検討を行い、寒天培地上でのコロニーの選別を利用して相互作用を検出する実験系の構築を試みる。ここでは、大腸菌を用いたペリプラズム発現系や、ファージを利用した方法、グラム陽性菌を利用した分泌発現系などを利用して、薬剤と発現タンパク質間の相互作用をin vivoで検出する系の開発を試みる。 また、抗生物質として利用されているカナマイシン耐性遺伝子産物であるアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼを検出酵素とした相互作用検出系の開発にも着手する。 これらの系を利用して、アンピシリンやカナマイシンによる薬剤-タンパク質間相互作用のスクリーニングが可能な系を確立する。実際に上タンパク質ライブラリ発現系を用いて、アンピシリン耐性やカナマイシン耐性を利用したオフターゲットタンパク質の探索に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の使用予定額が申請時よりも大きく減少したこと、消費税の影響があることを鑑み、節約につとめざるを得ず、何とか次年度に繰り越すことができた。
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