近年、細胞内の分子環境に応じて、グアニン四重鎖 (G4) と呼ばれる核酸の高次構造が形成されることが明らかとなっている。G4は、複製、転写、翻訳、さらにはmicro RNAやlong non-coding RNAの機能制御にも寄与することが報告されている。G4の新規機能の理解、制御に役立つのがG4に結合・安定化することが出来る化合物、G4リガンドであり、本研究ではこれらを扱う研究に取り組む。前年度までに、G4を特異的に安定化、蛍光検出出来るLight up型蛍光G4リガンドを開発しており、細胞内でのG4の可視化も達成している。 本年度では当該化合物をG4マーカーとして用い、最近注目されているbiomolecular condensateの一つであるストレス顆粒 (SG) の検出を行う事とした。SG形成は翻訳時にRNAをある種のストレスから守る防御機構であり、近年SG中においてG4の存在が示唆されていたが低分子化合物による検証は行われておらず、これを検証する。 その結果、1) 酸化ストレスを誘導するタプシガルギンを処理した細胞でSG中でG4を検出できること、2) RNase処理でG4の局在は消失すること、3) G4リガンドの処理によってもSGが誘導され、開発した化合物でG4形成を観測できた。以上により開発した化合物は細胞内でのG4マーカーとして実用的であるとともに、SG上でG4が形成されていることが確認できた。今後はG4リガンドにより誘導されるSGについてより詳細に調査を進めていく。
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