本研究では、糖鎖受容体を始めとする受容体などの非酵素タンパク質を無洗浄で蛍光検出可能なturn-on型蛍光プローブの探索手法の開発を進めている。 昨年度までに、種々の単糖ユニットとGFP色素誘導体のコンジュゲートを用いた検討の中で、グルコースコンジュゲート体が、膜に存在し糖の輸送を担うグルコース輸送体(GLUT)に結合して蛍光を示したことを示唆する結果を得ていた。そこで本年度では、詳細な検討を行った。GLUTは種々のがんで発現が亢進しており、バイオマーカーとしても期待されている。これまでに、プローブ由来の蛍光シグナルを得ていたが、再現性を確認する中で、この蛍光シグナルは微弱であることが明らかになった。そこで、種々のGFP色素誘導体を用いてGLUTに対するドッキング計算を行い、フェニル基を導入したGFP色素誘導体がGLUTの基質結合サイトにぴったりと収まると予想されることを見出した。そこでこのプローブを合成し、同様に無洗浄の細胞イメージングを行ったところ、プロトタイプのプローブよりも約10倍程度蛍光強度の向上に成功した。 さらに本年度では、合成した種々のGFP色素誘導体のturn-on蛍光特性と構造の関係を理解し、さらなる分子設計につなげるため、励起状態計算を行いGFP色素誘導体の構造と励起状態でのねじれの関係を調べた。その結果、種々の誘導体の励起状態でのねじれの活性化障壁の違いや、GFP色素誘導体のこれまで知られているねじれ位置(二重結合部位)以外でのねじれを示唆する結果も得た。これらの知見は、標的タンパク質結合時や非特異的結合時の蛍光応答を調整する際の分子設計に重要である。 以上、本研究では、GLUT標的のturn-on型蛍光プローブ開発をはじめとして、非酵素タンパク質を標的としたturn-on型蛍光プローブの効率的な開発に必要な色素群の開発を達成した。
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