研究課題/領域番号 |
18K05355
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村田 亜沙子 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50557121)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リボソーマルフレームシフト / RNA二次構造 / 翻訳制御 / 合成小分子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,「小分子で駆動する-1リボソームフレームシフト(-1PRF)とタンパク質の輸送局在制御への応用」である。本年度は以下の研究計画を実施した。①化合物誘起型に改変したウイルス由来シュードノット配列を用いる-1PRFの制御: 当研究室で開発したNCT誘導体が,CGG/CGG配列を含む改変VPK(Variant pseudoknot of mouse mammary tumor virus) 配列に結合してシュードノット構造を誘起することにより,-1PRFを介した融合タンパク質合成を誘導できることを明らかにした。しかし-1PRF効率が低く,最適化の必要があった。そこで,VPK配列と比べて高いフレームシフト効率が望めるSRV-PK (Simian retrovirus-1 pseudoknot) をNCT誘起型にした改変SRV-PKを複数デザインし,NCT添加に伴う二次構造変化をゲルシフトアッセイにより確認した。②ゲルシフトアッセイおよびFACSを利用した,化合物誘起型シュードノット配列の探索: -1PRFの効率を最大にするNCTn誘導体とRNA配列の組み合わせを得るために, セレクション法を適用する。今年度は,FACSによる配列探索の可能性を評価するために,改変VPK配列を2種類の蛍光タンパク質の間に導入したレポータベクターを作製し,NCTn誘導体による-1PRFの効率の変化を蛍光イメージャーおよびFACSを用いて評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①化合物誘起型に改変したウイルス由来シュードノット配列を用いる-1PRFの制御: やや遅れている。"研究実績の概要"に示したように,8種類の改変SRV-PKをデザインし,ゲルシフトアッセイによりNCTn誘導体添加に伴うRNA二次構造の変化を検証した。ゲルシフトアッセイによる評価では,いくつかの改変SRV-PKでNCTn誘導体の添加により何らかの二次構造変化が観察されたものの,想定していた二次構造の形成は見られなかった。②ゲルシフトアッセイおよびFACSを利用した,化合物誘起型シュードノット配列の探索: おおむね順調に進展している。今年度は,FACSによる配列探索の可能性を評価するために,改変VPK配列を2種類の蛍光タンパク質の間に導入したレポータベクターを作製し,NCTn誘導体による-1PRFの効率の変化を蛍光イメージャーおよびFACSを用いて評価した。これまでの研究により,NCTn誘導体の結合モチーフCGG/CGGを含む改変VPK配列が,NCTn誘導体の結合によりシュードノット構造を形成し,-1PRFを引き起こすことを明らかにしている。この改変VPK配列,および-1PRFに必要なもう一つのRNAエレメントである滑り配列を,iRFP670, EmGFPの蛍光タンパク質の間に導入したレポーターベクターを作製した。このレポーターベクターをトランスフェクションにより導入したHeLa細胞に対して, NCTn誘導体の非存在下/存在下で培養を行い,蛍光イメージャーおよびFACSにより,各細胞の上記蛍光タンパク質の蛍光強度を測定した。FACSにより分離した細胞を解析したところ,iRFP陽性細胞あたりのiRFP陽性-EmGFP陽性の細胞の割合がNCTn誘導体の添加に伴い増加することが分かり,セレクションの方法としてアッセイが有効であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に得られた研究成果をもとに,アッセイの有効性が示された蛍光タンパク質を用いたレポーター系とFACSを用いて化合物誘起型シュードノット配列の探索を行い,-1PRF効率を最大化する配列・化合物ペアの取得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めるにあたって必要に応じて研究費を執行したため,研究計画に大きな変更はなく,当初予定していた計画に沿って研究を進める。
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