研究課題
R1年度は、糖鎖を提示するための細胞の作製とその評価を行った。細胞は共同研究者より提供された複合型N-グリカン構造を持たないHeLa Mgat1 KO細胞を用いた。この細胞にHaloTag融合トランスフェリン受容体の発現遺伝子を導入し、安定発現株を作製した。HaloTagが機能することを確認するために、TMRリガンドを添加したところ、細胞膜が染色されることを確認した。続いて、所属研究室にて合成が完了している、末端にハロアルカンを持つ複数の蛍光修飾糖鎖リガンドを6種類用いて、それぞれ結合確認を行った所、問題なく細胞膜でのリガンド結合による蛍光が確認できた。そこで上記リガンドのうち、bisecting GlcNAc 糖鎖型のものについて、高親和性を有するPHA-E4レクチンとの相互作用を評価したところ、糖鎖特異的なレクチン結合が確認された。以上より、生細胞における合成糖鎖提示システムの構築に成功した。続いてこのシステムを用いて、シアル酸とヘマグルチニンの結合を確認した。具体的には、Influenza A H1N1 (A/WSN/33) およびInfluenza A H5N1 (A/Vietnam/1194/2004)を購入し、HeLa細胞のHaloTag融合GPIアンカー型タンパク質を一過性発現株において、それぞれのヘマグルチニンに結合する合成糖鎖リガンドを付加し、結合能を確認した。現在の所、HeLa親株に発現する糖鎖の影響により、特異的結合が確認しづらい状況であるため、発現させる細胞株を選定中である。人工細胞においてもDOPC、DPPC、コレステロールの3成分系に蛍光糖脂質プローブを追加し、相分離リポソームの構築および分離の可視化に成功している。
2: おおむね順調に進展している
H31(R1)年度の研究計画である人工細胞における脂質ラフトの再構築には成功しており、合成糖鎖提示細胞においてもインフルエンザウイルス感染に必要なヘマグルチニンの結合を確認できているため。
H31(R1)年度は概ね研究計画に沿って実験を進行したが、本研究から発展したHaloTag技術を用いた合成糖鎖提示細胞の構築と、シアル酸構造の異なる2つの糖鎖リガンド(それぞれヒトインフルエンザ、鳥インフルエンザに結合する構造を有する)の合成に成功したことは、本研究を最も推進させる要因となった。そこで相分離リポソームに加えて、合成糖鎖提示細胞でのこのシアル酸構造の異なる2つの糖鎖リガンドを用いてヘマグルチニン(HA)との結合を検証していく。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 2件、 査読あり 12件) 学会発表 (46件) (うち国際学会 9件、 招待講演 12件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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