研究課題/領域番号 |
18K05358
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
坂本 寛 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (70309748)
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研究分担者 |
平 順一 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (20549612)
森本 雄祐 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (50631777)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヘム / センサー / プローブ / イメージング / FRET |
研究実績の概要 |
Ⅰ.A 蛍光蛋白質融合型HO-1(第2世代ヘムセンサー)の改良①広い濃度域のヘムに対応するためのヘム親和性の異なるプローブの作製:以前の研究でrHO-1のヘムとの相互作用部位であるアミノ酸残基Lys18,Lys179,Arg183,His25をAla置換したところ,ヘム親和性が低下することを見出している。そこで,EGFP-D140Hにこれらの変異を導入し,EGFP-D140H/K179A,EGFP-D140H/K179A/R183A,EGFP-D140H/K18A/K179A/R183A,EGFP-D140H/H25Aを作製し,ヘム親和性の変動を確認した。さらに,rHO-1の酵素活性部位をHisではなくAlaに置換したプローブEGFP-D140Aも作製し,EGFP-D140Aおよび,EGFP-D140Aに上記の変異を導入したプローブについてもヘム親和性を確認した。 Ⅰ.B 蛋白質-蛋白質間相互作用を利用した発光型ヘムセンサー(第3世代)の構築:FRET型センサーとして,HO-1とHO-1のレドックスパートナータンパク質であるNADPH-シトクロムP450還元酵素(CPR)の融合タンパク質をデザインした。ヘム分解の際,HO-1はCPRと相互作用することが明らかとなっており,以前の研究でホロ型rHO-1とCPRの変異体(deltaTGEE)の共結晶構造が解かれている。本研究では,rHO-1とdeltaTGEEの相互作用を利用し,rHO-1-deltaTGEE融合タンパク質の両端にシアン色蛍光タンパク質(CFP)と黄色蛍光タンパク質(YFP)を融合させたセンサー(CFP-rHO-1-deltaTGEE-YFP)を作製し,rHO-1-deltaTGEE相互作用により生じるFRETによる色調変化を利用して,細胞内の遊離ヘムの動態を追跡可能なバイオセンサーの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ⅰ.A①:EGFP-D140Hに更なる変異を導入したプローブをそれぞれ作製し,ヘミン滴定による蛍光スペクトル測定によってKd値を求めたところ,塩基性アミノ酸のAla置換による顕著な親和性の低下が見られなかった。そこで,rHO-1の酵素活性部位Asp140をAlaに置換したEGFP-D140AおよびEGFP-D140A/K179A,EGFP-D140A/K179A/R183A,EGFP-D140A/K18A/K179A/R183Aを作製し,ヘム親和性を調べたところ,EGFP-D140Hと比べて1/10~1/20倍の低下を確認した。EGFP-D140A/K18A/K179A/R183Aでは,ヘム親和性がミリモラーのレベルまで低下した。これにより,遊離ヘムの検出範囲を拡大できたことが示された。 Ⅰ.B: CFP-rHO-1-deltaTGEE-YFPを作製し,CFP励起状態で蛍光スペクトルを測定したところ,ヘミン滴下前から527 nmにおけるYFPの蛍光のピークが観測され,へミン非存在下ですでにFRETが生じていることが示唆された。その後,ヘミン濃度が増大するに応じて,CFPとYFPの蛍光強度がともに減少した。以前蛍光タンパク質を融合させたrHO-1にヘミンを滴下すると,蛍光タンパク質のエネルギーがrHO-1に結合したヘムに吸収されることが観測されており,FRETドナーであるCFPの蛍光エネルギーが,rHO-1に結合したヘムに吸収されたことにより,CFPとYFPの蛍光がともに減少したと考えられた。またrHO-1-deltaTGEEの結晶構造から,両蛍光タンパク質とrHO-1のヘムポケットとの距離が近く,蛍光タンパク質の蛍光のエネルギーがrHO-1に結合したヘムに吸収されることが推測された。
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今後の研究の推進方策 |
Ⅰ.B: CFP-rHO-1-deltaTGEE-YFPにおけるFRETでは,ヘムが結合したHO-1とdeltaTGEEの近接によってドナーのCFPからアクセプターのYFPへとエネルギーが移動することに基づくが,HO-1のN末端に融合されたCFPのエネルギーが,比較的近位に位置するHO-1に結合したヘムに吸収される問題点が示唆された。そこで,ヘムへのエネルギー吸収を回避するために蛍光蛋白質の配置を入れ替えたセンサー(YFP-rHO-1-deltaTGEE-CFP)の作製試みる。 Ⅱ.B:これまでのヘムセンサーを用いたヘム検出法は,遊離状態のヘムが結合することによる蛍光の消光に焦点を当てていたが,生体サンプル中のヘム検出に関しては,非特異的な結合の存在などにより課題が残る。そこで,生体サンプル中の物質に非特異的に結合した状態で存在するヘムの量を評価するために,センサーの蛍光の回復を用いるヘム検出法の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度,本科研費と他の外部資金で大量の薬品,試薬,消耗品を購入した。今年度はそれらを実験に用いたため,物品の購入は予定よりも少なくてすんだ。次年度使用が生じた予算は,次年度予算と合算して,機器類の購入に使用する予定である。
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