研究課題/領域番号 |
18K05363
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
古徳 直之 立命館大学, 薬学部, 准教授 (20362618)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 海洋天然物 / ガン細胞増殖メカニズム / 作用機序解明 / 細胞内ラベル化 / 抗がん剤 |
研究実績の概要 |
本研究の目的達成には、arenastatin Aが結合する二種の標的タンパク質、すなわちチューブリンとEXD3に対してそれぞれ選択的に結合し、ラベル化するためのケミカルプローブの開発が必要である。そこで、化合物の構造変換が各標的タンパク質との親和性にどのような影響を及ぼすかを解析する目的で、過去の構造活性相関研究の情報を基盤として、arenastatin Aの各種類縁体の合成と活性評価を行うこととし、初年度は、チューブリンとの相互作用に重要であることが示唆される6位メチル基をヒドロキシメチル基へ変換した類縁体の合成と活性評価を検討した。 すでに確立済みの全合成法を応用することで、目的の類縁体を合成することに成功した。またこの際、合成の最終盤で行うエポキシ化反応が、天然物の合成を行う際と比較して、高立体選択的に進行することを見出した。さらに、6位の官能基のサイズや極性等が活性発現に与える影響を確認する目的で、導入したヒドロキシ基をさらに変換した数種の類縁体もあわせて合成した。これらの類縁体について、ヒト咽頭上皮がん細胞KB3-1に対する細胞毒性試験を行った結果、いずれの類縁体でも天然物と比較して大幅に活性が低下することが明らかになった。正常細胞に対する活性も減弱していることから、二種の標的タンパク質それぞれに対する親和性が低下したことが示唆される結果であると考えている。これらの成果について学会発表を行った。 一方、修飾基内包型プローブを用いたラベル化研究の一環として、以前に見出した海洋天然物biakamide類について詳細な構造活性相関研究を行い、その結果を論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回合成に成功した類縁体をはじめ、他の部位を改変した数種の類縁体についても合成が完了しつつあり、当初の計画通りに種々の類縁体およびプローブを合成する研究基盤は確立できたと考えている。また、各種細胞を用いたそれらの活性評価を行う態勢も整い、チューブリンとのドッキングスタディの結果などを統合した解析によって、チューブリンとの相互作用部位については解析を進める目処がついた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き他の類縁体合成を進めるとともに、得られた活性評価の結果等を勘案して、チューブリンおよびEXD3をそれぞれ選択的にラベル化できるアフィニティープローブの開発を目指すとともに、それを用いた相互作用解析や、EXD3の細胞内局在解析等を行う。また、並行して、ガン細胞選択的な増殖阻害剤、すなわちEXD3に対して選択的に結合してその機能を阻害する化合物の創製を目指した検討も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
Arenastatin A類縁体の合成研究が順調に進展したため、合成原料や試薬類への使用を予定していた物品費が当初の想定より少額に抑えられた。これを次年度の研究に有効活用し、種々の類縁体について合成および活性評価を行うことで、研究のさらなる進展につなげたい。
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