研究課題/領域番号 |
18K05364
|
研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
所 美雪 (馬渕美雪) 兵庫医療大学, 薬学部, 研究員 (60714897)
|
研究分担者 |
山下 政克 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (00311605)
田中 明人 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (30454789)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | アレルギー |
研究実績の概要 |
AT523を我々が開発した化学的に安定で親水性の固相担体であるAquaFirmusおよびAquaFirmus2000に固定し、マウス脾臓から調製したTh2ライセート(化合物による拮抗があるサンプルとないサンプル)と1時間混合して結合実験を行った。アフィニティ樹脂上に結合したタンパク質を溶出し、電気泳動により拮抗が見られたバンドについてマスで解析したところ、7種類のRabのサブタイプが同定された。さらに、同様のサンプルを用いて、注目タンパク質に向かう抗体を用いてウエスタンブロッティングを行い、注目タンパク質に拮抗が認められるかを検討し、化合物に特異的に結合するタンパクかどうかの確認を行った。マスで同定した 7つのRabサブタイプのうち、入手可能であった5種類のRabに向かう抗体を用いて実施したところ、4つのサブタイプは拮抗があるライセートできれいに結合タンパクのバンドが減弱し、拮抗が認められたが、ひとつのサブタイプは逆に拮抗ありの方がバンドが強く出る結果となった。これは、化合物による拮抗がないライセート中では化合物との結合が強いサブタイプが優先的にアフィニティ樹脂上の化合物に結合するが、拮抗があるライセート中ではアフィニティが強いサブタイプがまずライセート中の化合物と結合し、結合が弱いサブタイプは他のサブタイプとの競合によりライセート中の化合物とは結合せず、徐々に樹脂上の化合物に結合したためと考えられ、アフィニティの度合いの違いによるもので、いずれも特異的に結合するものと考えられた。さらに対象化合物を独自開発済み金薄膜チップに固定し、各サブタイプのヒト遺伝子構築を行い、ヒトタンパク質をカイコを用い発現し、ビアコアを用いて各相互作用の検証を行った。また、化合物の最適化研究も並行して進めており、よりin vitro活性の強い化合物が得られている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象化合物を独自アフィニティ樹脂用担体に固定化し、ターゲットを含むライゼーと混合することによって、目的とする直接結合タンパク質を同定することができた。当該タンパク質と化合物の特異的結合はアフィニティ樹脂実験時に拮抗実験で確認し、ウエスタンブロッティングを用いた実験においても拮抗を確認することができ、これらの結果から、目的とするターゲットタンパク質(候補)を決めることに成功した。この同定作業において当該候補タンパク質のサブタイプが広く同定されたが、これがMS解析時の共通配列の同定による人為的なものなのか、共通構造に対する特異的結合に基づく幅広いサブタ イプとの特異的相互作用かを確認するため、BIACOREシステムを用い、対象化合物を独自開発済み金薄膜チップに固定し、各サブタイプのうちいくつかのヒト遺伝子構築を行い、ヒトタンパク質をカイコを用い発現し、相互作用を定量的に評価し、各相互作用の検証を行ったところ、satulationのあるきれいなセンサーグラムが得られ、解析により親和定数も算出した。また、化合物最適化研究を進めており、よりin vitro活性の強い化合物も創製しており、おおむね順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの検討で、対象化合物に特異的に結合するタンパク質群(複数のサブタイプ)を同定することができ、各サブタイプに特異的な抗体を用いてウエスタンブロッティングによりさらに確認したところ、対象化合物はいくつかのサブタイプタンパク質と特異的結合をしていることが示唆された。さらに、対象化合物を独自開発済み金薄膜チップに固定し、各サブタイプのヒトタンパク質をいくつかカイコ等を用い発現し、BIACOREシステムを用い相互作用を定量的に評価し、各相互作用の検証を行ったところ、きれいなセンサーグラムが得られ、KD値を得ることができている。その値はin vitro評価のIC50値から大きく外れていなかった。今後さらに、候補サブタイプすべてのヒトおよび評価系に用いているマウスの遺伝子構築およびタンパク質を作成し、ビアコアでの相互作用を確認する。 また、連携する研究者と協力し、本特異的相互作用タンパク質(群)と当該化合物の薬理作用との因果関係の解明を進め、薬効メカニズム解明を進める。その中で、特に興味深い相互作用タンパク質が見いだされれば、改めてスクニーング系を構築し、よりクリアな系を用いた化合物の最適化を行い、目的である革新的な 抗アレルギー薬の創製を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
概ね実験は計画通りに進んでいるが、端数が生じた。次年度はビアコア測定用のビアコア試薬、タンパク発現の発注等に充てる予定である。
|