研究課題
細胞結合アッセイの基礎的な処理条件を確立するために、RGDペプチド、RGEペプチド、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリーL-アルギニン(PLA)、コラーゲンを固定化したテストケミカルアレイを作製し、HEK293T細胞を用いて、これらの化合物との結合が検出できる条件を検討した。RGD配列は、フィブロネクチンの細胞接着部位として同定されたアミノ酸配列であり、細胞表面のインテグリンがこの配列を認識して結合する。RGD配列のアスパラギン酸(D)をグルタミン酸(E)に置換したRGE配列は、細胞接着活性を失う。この3アミノ酸だけでは接着活性は低いため、RGD、RGEペプチドとしては、環状ペプチドであるCyclo(-GRGDSP)、Cyclo(-GRGESP)をそれぞれ用いた。PLL、PLAは正電荷を有しており、細胞表面が負電荷を有している細胞と静電的に結合するため、ポジティブコントロールとして使用した。HEK293T細胞をCell Tracker Orangeで染色し、種々の条件で、テストアレイ上で1時間インキュベーションしたところ、PLL、PLAおよびRGDペプチドに細胞の結合が見られる条件を見出した。その際、RGEペプチドには細胞の結合が見られなかった。しかし、細胞の結合量を増やすために、インキュベーション時間を一晩中に設定したところ、テストアレイ表面全体に細胞が接着してしまい、化合物スポットに対する結合の選択性が判別できなくなった。今後、基板の検討も含めて細胞結合アッセイの処理条件の検討を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
今年度計画していたケミカルアレイ上での細胞結合アッセイの基礎的な条件の検討を行なったが、条件によっては細胞の吸着が問題になることがわかった。来年度には、金基板のケミカルアレイにより表面プラズモン共鳴法での検出と細胞の吸着を抑制する方法を試す予定であり、今年度、問題点を把握することができたため、概ね順調に進展している。
本研究では、細胞の非特異的吸着を抑制することが重要である。細胞の非特異的吸着を抑 制する技術の開発のために、ガラス基板表面上に化合物を固定化したケミカルアレイと金基 板表面上に化合物を固定化したケミカルアレイの2種類の方法で検討を進める予定である。膜結合蛋白質発現細胞を用いたリガンド探索手法として、細胞結合アッセイに加え、細胞内カルシウムイオン測定法によるスクリーニング条件の確立も行なっていく予定である。
本研究では、細胞の非特異的吸着を抑制することが重要である。細胞の非特異的吸着を抑制する技術の開発のために、ガラス基板表面上に化合物を固定化したケミカルアレイと金基板表面上に化合物を固定化したケミカルアレイの2種類の方法で検討を進める予定であるが、今年度は、ガラス基板での検討に時間がかかったため、金基板での検討が出来ず、次年度使用額が生じた。次年度では、次年度使用額と翌年度分の助成金と合わせて、細胞結合アッセイの金基板での検討および、膜結合蛋白質発現細胞を用いたリガンド探索手法として、細胞内カルシウムイオン測定法によるスクリーニング条件の確立のために使用する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件)
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