令和2年度は、北海道の普通畑圃場における施肥管理がバレイショ塊茎中のカドミウム濃度に及ぼす影響を調べることを目的に、十勝地域と上川地域の生産者圃場においてカルシウム施肥やリン酸減肥などを行って栽培したバレイショ塊茎中のカドミウム濃度を調べた。また、これまでに得られた研究成果について総合的な解析を行った。 火山性土が広く分布する十勝地域の生産者圃場において、播種後の硫酸カルシウムあるいは過リン酸石灰の全層施肥を行って栽培試験を行ったところ、標準施肥区と比べて塊茎中のカドミウム濃度が、硫酸カルシウムの全層施用で約25%、リン酸アンモニウムを過リン酸石灰に置き換えた全層施用で約18%、それぞれ有意に低下した。台地土が広く分布する上川地域の生産者圃場では、リン酸減肥で約24%低下し、リン酸減肥と硫酸カルシウムの全層施用を組み合わせることで約30%有意に低下した。カルシウムイオンとカドミウムイオンの拮抗作用がバレイショ塊茎へのカドミウム吸収を低下させると考えられた。 北海道十勝地域と上川地域の計90地点の普通畑圃場から採取した表層土壌の理化学性や可給態カドミウム量と塊茎のカドミウム濃度との関係を決定木解析により調べたところ、リン酸吸収係数が高くかつ全炭素量が多い土壌で塊茎のカドミウム濃度が低いことが示された。黒ボク土に含まれるアロフェンや腐植物質によるカドミウムイオンの特異吸着が塊茎へのカドミウムの移行に大きな影響を及ぼすことが示唆された。また、リン酸吸収係数が低い非火山性土では、塩基飽和度が低い土壌で塊茎のカドミウム濃度が高いことが示された。 以上の結果から、カルシウム施肥やリン酸減肥により塊茎のカドミウム濃度を低下させる可能性があること、非火山性土の農耕地ではン酸肥料多施用によるカドミウムの集積を抑制するとともに、塩基飽和度を高めて塊茎へのカドミウムの移行を減らすことが重要である。
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