研究課題
本研究では、土壌中の鉄の酸化還元状態の変化と微好気性鉄酸化細菌の群集動態の関係性および微好気性鉄酸化細菌の鉄酸化特性を明らかにし、水田生態系の鉄酸化反応における微好気性鉄酸化細菌の役割を位置付けることを目的としている。本年度は、水稲作と畑作が数年おきに繰り返される田畑輪換圃場を対象に微好気性鉄酸化細菌群集の動態を解析した。東北農業研究センター大仙研究拠点内において、2000年以降水稲作とダイズ作が2ー3年ごとに繰り返されている区(輪換区)と水稲作を継続している区(対照区)より、2008年以降、経時的に採取した土壌(深さ5ー10cm)から抽出されたDNAを対象とした。抽出DNAを鋳型としてGallionellaceae科微好気性鉄酸化菌の16S rRNA遺伝子を対象としたqPCRおよびPCR-DGGE解析を行った。その結果、、Gallionellaceae科微好気性鉄酸化細菌の16S rRNA遺伝子コピー数は、畑転換1年目の栽培中(夏)以降に対照区に比べて有意に低くなり、復田後は1年目、特に水稲作後の落水時に同程度の値まで回復した。畑転換により土壌中で鉄還元反応が活発に起こらなくなると2価鉄が生成されなくなることで、鉄酸化細菌数が減少することが示唆された。一方、復田後は、湛水により鉄還元反応が再び活性化して2価鉄が生成されるため、微好気性鉄酸化菌は生成された2価鉄を落水時に酸化することで増殖することが示唆された。また、PCR-DGGE解析により、輪換区と対照区のDGGEパターンは異なる傾向にあることが示され、長期間の田畑輪換により異なる群集構造が形成されたことが示唆された。
4: 遅れている
コロナ禍の影響で6月過ぎまで研究を開始することができず、また、6月以降も研究活動がある程度制限されたため、当初予定していた計画通りに研究を進めることができなかった。
当初予定していた、微好気性鉄酸化細菌が生成する菌体外高分子物質の検出を試みるとともに、土壌の室内培養実験による微好気性鉄酸化細菌の群集構造解析を行い、鉄の酸化還元状態の変動と群集構造の変化の関係性をさらに解析する。
コロナ禍で6月まで研究を開始できなかったことと、6月以降も研究活動が制限されていたため、当初予定していた研究の一部を遂行することができなかった。その分を次年度に繰り越して行う予定である。
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Soil Biology and Biochemistry
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