研究課題/領域番号 |
18K05376
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
佐伯 雄一 宮崎大学, 農学部, 教授 (50295200)
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研究分担者 |
山本 昭洋 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30452915)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 根粒菌 / ダイズ / Bradyrhizobium / 群集構造 / 多様性 / 熱帯 / フィリピン |
研究実績の概要 |
本研究では熱帯の島嶼国であるフィリピン土壌を対象に、土着ダイズ根粒菌の多様性と群集構造を明らかにすることを目的に研究を行っている。これまでフィリピンの各地12箇所の土壌を採取し、農林水産大臣の許可を得て輸入した。まず、土着化しているダイズ根粒菌を分離するために、無窒素水耕液を含むバーミキュライトポットを調製し、土壌を埋設し、フィリピンで栽培されているダイズ品種PSB-SY2を表皮殺菌後、播種した。昼夜33℃16時間28℃8時間に設定したグロースチャンバーで28日間栽培し、着生した根粒を採取した。根粒ホモジネートをYMA平板培地に塗布し、二度のシングルコロニー分離によっておよそ600株の根粒菌を分離した。接種試験によって根粒着性能が認められた分離株をフィリピン土壌からのBradyrhizobium属ダイズ根粒菌とした。土壌の理化学性について、pH(H2O), EC, 全C、全N、Bray-P、交換態Kを測定した。各土壌採取地の気象データはPAGASAより得た。土地利用状況は現地聞き取り調査によって行った。 土着ダイズ根粒菌のHM培地による培養後、遠心分離によって集菌した根粒菌からDNAを抽出し、PCR鋳型とした。16S rRNA遺伝子、16S-23S rRNA 遺伝子Internal Transcribed Spacer (ITS) 領域、およびrpoBハウスキーピング遺伝子をターゲットとし、PCR増幅を行い、シークエンス解析を行った。 その結果、フィリピンには温帯地域よりも多様なダイズ根粒菌が存在し、群集を形成していることが明らかとなった。フィリピンにおいてはB. elkanii根粒菌が主として存在するが、B. diazoefficiensも水田利用されている土壌から分離された。以上、土壌の理化学性や土地利用によって土着根粒菌群集構造に一定の傾向を見出すことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Bradyrhizobium属ダイズ根粒菌600株ほどを分離することが出来た。さらに、学会発表1件および論文1報を発表することが出来た。したがって概ね順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
温帯地域では有用根粒菌として期待されるB. diazoefficiensが分離されたが、気候によっては窒素固定能の発現様式が異なることが考えられるため、分離株を用いて温度依存的窒素固定能の発現を解析し、気候による窒素固定能の違いを明らかにする。また、各種根粒菌の分布様式について、気候や土壌の理化学性および土地利用形式との関連性が認められるため、環境因子との関連性と土着根粒菌の群集構造コントロールの可能性を探ることにしている。
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