研究課題
本研究では、共生窒素固定に影響を与えると考えられる様々な環境因子のうち、乾燥地や海岸線の農地に起こりやすい塩類ストレスに着目して研究を行った。本試験には、ダイズの栽培品種 CNS、根粒菌 Bradyrhizobium japonicum USDA6T、B. diazoefficiens USDA110T、B. elkanii USDA31、Sinorhizobium fredii USDA191 を使用し、塩処理による根粒着生位置、ダイズ根からのイソフラボン分泌量、及び根粒形成遺伝子の発現解析を行った。塩処理条件下での根粒菌単独接種試験では、USDA6T、USDA110T の根粒形成時期が遅くなり、根粒形成位置が主根から側根へ変遷していた。一方、USDA191の根粒形成時期が早まり、根粒形成位置が側根 から主根へ変遷していた。また、B. elkanii USDA31 の根粒形成時期や位置への影響は確認できなかった。次に、イソフラボンの分析の結果、主にダイゼインが分泌されており、その分泌量は塩処理によって有意に減少した。ゲニステインは比較的低濃度で有意な変化はなかった。根粒菌の根粒形成遺伝子 (nodC)の発現解析の結果、 塩処理によって USDA6T、USDA110Tの nodC発現は抑制され、USDA191の nodC発現は促進された。USDA31の nodC発現への影響は確認できなかった。以上の結果から、土壌の塩類集積に伴い、B. japonicumや B. diazoefficiensの根粒形成遺伝子の発現が抑制される一方、S. fredii は根粒形成遺伝子の発現を促進し、ダイズによる認識と感染が速やかに起こり、根粒占有率が増加すると推測された。その後、土壌中への感染根粒菌の放出が起き、S. fredii の土壌中での優占化が進むと考えられた。
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