研究課題/領域番号 |
18K05377
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
浦口 晋平 北里大学, 薬学部, 講師 (20638837)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メリステム / 細胞型 / 有害元素 |
研究実績の概要 |
本研究は、モデル植物であるシロイヌナズナの根の成長の中心である根端分裂組織に着目し,有害元素の毒性メカニズムについて,根端の様々な細胞型レベルでの理解を得ることを目的としている。本年度は,有害元素のターゲットとなる細胞型の解析のため,まず有害元素の解毒において重要な役割を果たすAtPCS1の機能欠損株cad1-3にpAtPCS1::AtPCS1-GFPを導入した相補系統を樹立した。共焦点顕微鏡によりAtPCS1-GFPの根端における発現部位を解析したところ,AtPCS1-GFPの蛍光は,根端の最外層にあたる側部根冠および表皮細胞に認められ,有害元素耐性におけるこれら細胞層の重要性が示唆された。また,根の細胞型特異的レポーター系統のコレクションであるSAND系統をストックセンターより入手し,各細胞型の主要なレポーター系統について発現の特異性を確認した。また,有害元素の根端分裂組織に対する影響を解明するため,有害元素処理後のcad1-3の根の伸長を経時的に解析した。亜ヒ酸や無機水銀処理では,cad1-3の根の伸長がほぼ停止するのに対して,フェニル水銀では伸長が停止する個体では根端が異常に肥大することがわかった。フェニル水銀処理が根端の細胞分裂活性を亢進している可能性を細胞分裂マーカー系統の蛍光観察で検討したところ,細胞分裂活性は低下する傾向が見られ,逆に表皮細胞などにおいて細胞の肥大化が観察された。また,根端肥大に伴って根冠のアミロプラストが消失することがわかった。合成オーキシンであるNAAを共処理すると根端肥大は抑制されたことから,オーキシンの極性輸送がフェニル水銀によって影響される可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
根端の有害元素耐性において鍵となる細胞型について,まずはpAtPCS1::AtPCS1-GFP/cad1-3を確立し,その発現の部位特異性と生理的な役割を明らかにすることができた。また,表皮,皮層,内皮,側部根冠および静止中心など主要な各細胞型特異的レポーター系統の準備が整った。有害元素が元素種や化学形態によって根端に対する毒性の機序が異なる可能性を見出し,フェニル水銀による根端肥大については細胞分裂ではなく細胞の異常な肥大化が原因であり,オーキシン輸送が異常形態の形成に関わっている示唆を得た。
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今後の研究の推進方策 |
表皮,側部根冠,コルメラ,静止中心といった細胞型に着目し,それぞれのマーカー系統について共焦点顕微鏡による解析を進める。また,オーキシン輸送が毒性のターゲットの1つである可能性が見出されたことから,オーキシンに着目して研究を推進する。亜ヒ酸,無機水銀そしてフェニル水銀がオーキシン輸送体PINの発現や根端におけるオーキシン分布に及ぼす影響を解析する。
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