研究課題/領域番号 |
18K05379
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研究機関 | 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター |
研究代表者 |
永利 友佳理 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 任期付研究員 (90723859)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乾燥ストレス / リン酸欠乏 / ABA / ダイズ / 世代促進 |
研究実績の概要 |
本研究は、ダイズで見出した低水分ストレスとリン酸欠乏応答に関する知見を基に、シロイヌナズナを用いて乾燥ストレスやABAシグナルとリン酸欠乏応答の関係を遺伝学的に明らかにすることを目的としている。 平成30年度は、シロイヌナズナにおいて、土壌水分量とリン酸欠乏応答遺伝子発現の相関解析に向けた条件検討を行なったが、ダイズと同様の傾向が得られる最適な条件の決定には至らなかった。土壌条件や水分条件などの栽培条件の検討の結果、使用する土壌の種類が鍵を握ると考えられ、引き続き条件検討を進める。 一方、乾燥ストレスやABAとリン酸欠乏応答シグナル間のクロストークの解明に向けた研究においては、リン酸応答シグナルやリン酸欠乏応答遺伝子群の変異体の変異の固定化および種子の増殖を行ない、一部の変異体については、ABAとの関連が示唆される興味深い表現型を見出した。また、一連の解析から、CK2プロテインキナーゼに注目し、CK2の2つのサブユニットαとβは、 ABAシグナルをそれぞれ正と負に制御することを示した。さらに、ABAシグナル因子やその変異体を用いた解析から、ABA応答遺伝子発現において、CK2を介した新規経路が存在することを示し、CK2がストレス耐性や生育のバランス調整に関与する可能性が示唆された。 加えて、本研究の発想のベースとなるダイズにおけるストレス応答解析をより効率的に進めることを目的として、シロイヌナズナで使用している人工気象器を用いたダイズの省スペース・低コスト高速世代促進技術の開発を行った。これにより従来、圃場や温室において1年間に1-2回程度であったダイズの栽培サイクルを、年に5回可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乾燥ストレス時のリン酸欠乏応答を効率的に解析するための栽培条件については、引き続き検討を行う必要があるが、本研究課題の主要目的の一つである乾燥ストレスやABAとリン酸欠乏応答シグナル間のクロストークに関して、興味深い知見を得ることが出来た。また、乾燥ストレス応答において重要な課題であるストレス耐性と生育制御にCK2が関与する可能性を示し、論文発表を行った。さらに、本研究の発想のベースとなるダイズにおいて、省スペースかつ低コストな高速世代促進技術を開発した。本年度は、課題全体においては進捗しているため、本評価とする。
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今後の研究の推進方策 |
土壌水分量とリン酸欠乏応答遺伝子発現の相関に関する解析については、ダイズで得られた知見を参考に、土壌条件に着目して引き続き条件検討を進める。本年度興味深い知見が得られたABAシグナルとリン酸シグナル間のクロストークに関しては、優先して詳細な解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
翌年度には、トランスクリプトーム解析などを予定しており、解析費用に70万円程度必要になる。当初予算額の不足分を補填するため、本年度の経費を縮小した。
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