研究課題
多様な構造を持つ糖質には様々な優良な機能が知られている。自然界に豊富に存在する糖質は極めて限定的で,豊富な糖質を希少糖質へと変換する技術を開発することで、新しい糖質の応用が拓けると考えられる.本研究では,単糖変換を触媒する異性化酵素であり,グルコースからマンノースへの一段階異性化反応を触媒するマンノース2-エピメラーゼ (ME) について機能・構造を解明すること,ホモログの機能解析を通じて新たな単糖変換酵素を取得することを目的とした。本年度は,MEに特徴的な長いループ構造に注目して3つの細菌に由来するMEホモログの機能を大腸菌組換え酵素を用いて解析し,いずれのホモログにもME活性を認めた。このことから,MEに特徴的な長いループ構造に着目することで精度良くMEを取得できることが示された.また,興味深いことに,これらの基質を検討する中で,ME酵素がキシロースやリキソースなどの単糖にも作用し,エピメラーゼ活性のみならずイソメラーゼ活性も微弱ながら示すことが明らかになった.Runella slithformis由来MEの高活性化変異酵素の取得に先立ち、変異酵素のハイスループットスクリーニング系を検討した。すなわち,96穴プレートを活用した小規模培養系による組換え酵素生産条件,溶菌試薬による酵素抽出条件と無細胞抽出液の酵素活性の評価方法を確立した。単糖にも有意に高いエピメリ化活性を持つMelioribacter roseus由来セロビオース2-エピメラーゼ (CE) について,本酵素に見られたMEに対応する長いループに注目し,この削除変異酵素を調製して基質特異性を検討した.当該変異酵素は野生型酵素より明らかに低い単糖に対する特異性を示した.ループの短縮化に伴う単糖特異性の低下から,本ループ構造がM. roseus由来CEの単糖への高い活性に重要なことが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していたMEホモログの機能解析,変異酵素の解析を進めており,研究は順調に進展している.
本年度確立した変異酵素のハイスループットスクリーニング系を利用して高活性型MEの創出を計画している.また,得られた変異酵素 (あるいは野生型酵素) を利用した単糖変換について,実用的な条件下での反応を検討したい.そのほか,結晶化条件を引き続き探索し,構造情報の取得に努める.
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Applied Microbiology and Biotechnology
巻: 103 ページ: 6559-6570
10.1007/s00253-019-09944-3
http://lab.agr.hokudai.ac.jp/biochem/