研究課題/領域番号 |
18K05396
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研究機関 | 盛岡大学 |
研究代表者 |
徳田 元 盛岡大学, その他部局等, 名誉教授 (40125943)
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研究分担者 |
垰 和之 東京大学, アイソトープ総合センター, 助教 (00211996)
村上 聡 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (30300966)
成田 新一郎 盛岡大学, 栄養学部, 教授 (30338751)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リポ蛋白質 / ABCトランスポーター / 細胞膜 / 局在化 / 化学架橋 |
研究実績の概要 |
細菌に広く存在するリポ蛋白質の局在化機構を、大腸菌で解析することを目的にして本研究を展開している。本年度は、細胞質膜に存在するABCトランスポーターLolCDE複合体の構造モデルを作成し、機能に重要な部位を生化学的に同定することを主に解析した。 薬剤排出に関わるABCトランスポーターMacBの結晶構造を基にLolCDE複合体の全体構造モデルを構築した。このモデルの妥当性は今後さらに詳細な検討が必要ではあるが、生化学的機能解析を進めるに際し、有力なモデルである。 LolCDE複合体の機能として、ペリプラズムシャペロンLolAとの相互作用、リポ蛋白質との相互作用、ATP加水分解エネルギーの利用が考えられる。これまでの生化学的解析によって、LolAと相互作用するのはLolCであり、リポ蛋白質を結合するのはLolEであり、ATPを加水分解するのはLolDであることが明らかになっている。膜サブユニットLolCとLolEの様々の部位にアンバー変異を導入し、アンバー変異特異的にアミノ酸アナログpBPAを取り込む実験系で解析した。pBPAはUVの照射によって化学架橋をかける。初年度の解析として、in vivoでの架橋実験を行った。その結果LolCとLolE間が架橋される部位が、LolCとLolEの膜貫通領域からペリプラズムに出た部位に見いだされた。また、リポ蛋白質Lppと架橋する部位がLolC、LolEの両方の膜貫通領域に見いだされた。これは、リポ蛋白質が細胞質膜から遊離する初期の段階を表していると考えられる。一方、LolAとの架橋は今のところ検出されていない。これらの部位を構造モデルに当てはめて今後の解析をin vitroでも進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LolCとLolEは膜を4回貫通し、大きなペリプラズム領域を持った膜蛋白質である。LolCとLolEがLolCDE複合体内でどのように機能を分担し構造を変化させているかは、これまで想像するのみであった。今年度の解析によって、LolCとLolEの相互作用に重要な部位が明らかになった。この部位がATPの加水分解やLolA、リポ蛋白質の存在によってどのように変化するかを明らかにする手がかりとなる結果である。今年度の解析はin vivoであるため、今後はin vitroの解析によって明らかにする必要がある。また、リポ蛋白質を遊離する時のLolCとLolEの役割について、これまでの解析では、LolEとリポ蛋白質の相互作用のみが見いだされていたが、遊離初期にはLolCもリポ蛋白質と相互作用することを示唆する結果が得られたと考える。これは、何故リポ蛋白質の2番目のアミノ酸が、アスパラギン酸の場合に遊離されないかという選別シグナルの分子機構解明につながるのではないかと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
LolCDE複合体の構造モデルをさらに検証し、より精度の高いモデルとする。このモデルに基づき今年度の解析で明らかになったLolCとLolEの相互作用部位、リポ蛋白質Lppとの相互作用部位についてさらにATPの加水分解の影響を絡めて解析を進める。また、LolAとの相互作用部位はリポ蛋白質Palで明らかにしているが、リポ蛋白質Lppとのin vivoでの解析では明らかにならなかった。この理由はリポ蛋白質種の違いによるものかどうかを調べる必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の開始に際し、まず構造モデルを参考にしながらアンバー変異を導入することを中心に行った。したがって、生化学的な解析については、かなりの部分を次年度にまわしたため、経費が少なかった。
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