研究課題
出芽酵母の2つのトリプトファン輸送体のうち、低親和性型Tat1は細胞外トリプトファン濃度に依存せず細胞膜上に局在する。一方、高親和性型Tat2は低濃度トリプトファン条件下では細胞膜局在するが、高濃度では、ゴルジ体から直接液胞に運ばれ分解される。しかし、すでに細胞膜上にあるTat2が基質投与によって分解誘導されるかどうかは不明だった。そこで、GAL1プロモーターで発現を誘導し、トリプトファン投与後の輸送体の存在量を追跡した。その結果、Tat2はトリプトファン投与後30分で分解されたが、Tat1は270分後も安定に維持されていた。Tat2の細胞膜ドメインにおけるacidic patch(酸性アミノ酸に富む領域)の変異型D74R置換体では、分解が著しく抑制された。よって基質輸送に伴う動的構造変化がacidic patchを含む細胞質ドメインを露出させ、ユビキチン化による自己分解を誘発するものと結論づけた(論文投稿準備中)。Eisosomeは近年、アミノ酸輸送体の貯蔵コンパートメントとして注目されている。EisosomeマーカーPil1-mCherryとTat2-GFPとの共局在は、高濃度トリプトファンにより有意に低下した。すなわち、Tat2はeisosomeから離脱しエンドサイトーシスされるものと考えられる。興味深いことに、D74R変異体はトリプトファン非存在下でもeisosomeへの局在性が低下しており、その傾向はTat2の高活性型変異I285V(Amano et al. Biophys. Biochem. Res. Commun. 2019)でも同様に見られた。すなわち、Tat2はトリプトファンの取り込みと連動してeisosomeから離脱し分解されるものと考えられる。このことは過剰な基質の取り込みを抑制する安全弁の存在を示すものである。
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