研究課題/領域番号 |
18K05400
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原 良太郎 京都大学, 農学研究科, 特定准教授 (70553535)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | dioxygenase / screening / hydroxy amino acid / 2-oxoglutarate / hydroxylation / trans-3-hydroxyproline / Escherichia coli / bioproduction |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、工業的に有用なヒドロキシアミノ酸合成に用いるアミノ酸水酸化酵素の探索ツールを構築し、それを利用して新規酵素を発見することである。さらに、物質生産への応用展開も目指す。 本年度は、まず計画の基盤となる酵素探索ツールとしての大腸菌遺伝子欠損株を構築した。具体的には、2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ遺伝子とイソクエン酸リアーゼ遺伝子を、相同組換え法により欠損させた。これにより、当該大腸菌はTCA回路が遮断され、最少培地上では生育できない(不完全TCA回路)。ここで、2-オキソグルタル酸を共基質として利用し、反応の進行にともないコハク酸を生成するアミノ酸水酸化酵素の特性を踏まえ、当該酵素活性を発現する株においてのみ生育が可能となるため、生育を指標とした酵素探索が可能となる。 さらに、当該大腸菌は、2-オキソグルタル酸の分解を抑制できるため、効率的な物質生産にも有利であると予想された。そこで実際に、プロリン水酸化活性を示すエクトイン水酸化酵素を、上記大腸菌欠損株にて発現させ、プロリン水酸化反応における菌体触媒として用いた。その結果、2-オキソグルタル酸のほとんどは分解されず、プロリン水酸化反応に供給された。一方、比較対象として親株である大腸菌を用いて同じ反応に供したところ、2-オキソグルタル酸は大半が分解され、プロリン水酸化反応が停止した。すなわち、欠損株を用いることで2-オキソグルタル酸の分解を抑制しつつ、trans-3-ヒドロキシプロリンを効率的に生産することに成功したといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、遺伝子欠損大腸菌株を構築するとともに、当該菌株が、有用ヒドロキシアミノ酸であるtrans-3-ヒドロキシプロリンの生産にも応用できることを実証した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、遺伝子欠損大腸菌株を用いた酵素探索を実施するとともに、基質特異性の拡張を目指し酵素改変に着手する予定である。また、今年度の成果であるtrans-3-ヒドロキシプロリンの微生物生産は初の試みであるため、日本生物工学会年次大会での発表、ならびに論文発表を予定している。
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