研究課題/領域番号 |
18K05403
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
稲岡 隆史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (40391205)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ネオトレハロサジアミン / カノサミン / オートインデューサー / ペントースリン酸経路 / NADPH |
研究実績の概要 |
グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ(Zwf)はペントースリン酸経路の最初の酵素であり、Zwfを欠損した株ではペントースリン酸経路でのNADPH合成ができないため、Zwf欠損株のNADPH合成はTCA回路に依存する。これまでの結果から、glcP遺伝子破壊によっておこるNTD過剰生産がZwf欠損株におけるNADPH量を野生株レベルにまで回復させ、増殖能を回復することがわかった。これはNTDの過剰生産がTCA回路を活性化し、NADPHが合成されたことを示唆するものである。そこで、TCA回路の酵素であるアコニターゼ、フマラーゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ活性を測定した結果、これらの酵素活性には顕著な違いは観察されなかった。すなわち、NTDの過剰生産によって起こる細胞内NADPH量の増大はTCA回路の酵素活性が増大したわけではなく、TCA回路の中間体が流入したことを示している。これらの結果から、NTD生合成経路のNtdAによるアミノ基転移反応が進行することによって、ピリドキサルリン酸からピリドキサミンリン酸への変換の際にグルタミン酸から2オキソグルタル酸が生じ、TCA回路に流入することによってNADPHの合成が行われているものと推察できる。 また、他の研究グループにより、NTD生合成オペロンにはカノサミン合成に必要な酵素がコードされているが、カノサミン2分子を結合する最終反応を触媒する酵素は含まれていないことが報告された。そこで、カノサミンがNTDと同様にオートインデューサーとして作用するかどうかを検証した結果、カノサミンもNTDと同様にNTD生合成オペロンの発現を誘導するオートインデューサーとして機能することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NTDの合成はオートインデューサーという特性のため、培養毎にかなりばらつきがある。細胞内のNADPH量がNTDの合成量に影響されるため、大幅に変動することがわかった。細胞内NADPH量のより正確な定量を行うため、実験を繰り返す必要がある。、
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今後の研究の推進方策 |
①Zwf欠損株のサプレッサー変異株の取得:ペントースリン酸経路はNADPH生産に必要なだけでなく核酸合成にも重要である。Zwf欠損株で起こる増殖能の低下がNADPH量の低下だけによるものかどうかを明らかにするため、Zwf欠損株の増殖能を回復するサプレッサー変異株を取得し、解析する。
②NADPH定量:NADPHの定量は本研究課題の核となる部分である。令和2年度も各変異株や様々な培養条件での細胞内NADPH量の測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に学会出張を計画していたが、新型コロナウイルスによる感染拡大防止措置の為、学会開催が中止となり、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、論文投稿費用の一部として利用する予定である。
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