グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ(Zwf)はペントースリン酸経路の最初の酵素であり、Zwfを欠損した株ではペントースリン酸経路でのNADPH合成ができないため、Zwf欠損株のNADPH合成はTCA回路に依存する。これまでの結果から、glcP遺伝子破壊によっておこるNTD過剰生産がZwf欠損株におけるNADPH量を野生株レベルにまで回復させ、増殖能を回復することがわかった。これはNTDの過剰生産がTCA回路を活性化し、NADPHが合成されたことを示唆するものである。そこで、TCA回路の酵素であるアコニターゼ、フマラーゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ活性を測定した結果、これらの酵素活性には顕著な違いは観察されなかった。すなわち、NTDの過剰生産によって起こる細胞内NADPH量の増大はTCA回路の酵素活性が増大したわけではなく、TCA回路の中間体が流入したことを示している。NTD生合成経路のNtdAによるアミノ基転移反応が進行することによって、ピリドキサルリン酸からピリドキサミンリン酸への変換の際にグルタミン酸が消費され、2オキソグルタル酸が生じ、TCA回路中間体が蓄積し、NADPHの合成が行われているものと推察できる。 また、他の研究グループにより、NTD生合成オペロンにはカノサミン合成に必要な酵素がコードされているが、カノサミン2分子を結合する最終反応を触媒する酵素は含まれていないことが報告された。そこで、カノサミンがNTDと同様にオートインデューサーとして作用するかどうかを検証した結果、カノサミンもNTDと同様にNTD生合成オペロンの発現を誘導するオートインデューサーとして機能することがわかった。
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