研究課題/領域番号 |
18K05404
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
安部 博子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (40363220)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 酵母 / 糖鎖改変 / アジュバント |
研究実績の概要 |
本研究では、出芽酵母の細胞壁構成成分の組成、及び構造が変化する変異株を利用して、アジュバントとしての効果が最も高い変異株を見出し、その作用機序について明らかにすることを目的とする。これまでに、我々が取得している様々な細胞壁組成を持つ糖鎖改変出芽酵母群の中から酵母型糖鎖(外糖鎖)除去株TIY20(och1 mnn1 mnn4 破壊株:マンノース8個のN-結合型糖鎖を持つ(M8))及び本株に変異処理を施し増殖能および高温度感受性を回復させた株についてマクロファージ活性化能および骨髄由来樹状細胞(BMDC)活性化能についての解析を行った。 昨年度までに解析を終えた株に加え、今年度はTIY20の変異株としてC21、C27、C37、さらにマンノースを5個までにトリミングした(M5) YAB100-1株、TIY20-1株、O結合型糖鎖についても付加数を減らした株YAB110、YAB110-1、YAB111、YAB111-1株からの細胞壁の単離を行いマウスマクロファージ様培養細胞RAW-Blue細胞に添加し、TLR2およびDectin-1などのレセプターの活性化およびNF-kB、AP-1の活性化について調べた。加えて、マウス骨髄から回収したBMDCに上記と同様の細胞壁を添加した際のサイトカイン誘導能についても調べた。 その結果、新たに加えた株の細胞壁に関しても、マウスマクロファージ様培養細胞では野生型酵母とほぼ同様の活性を示し、糖鎖の違いによる活性の差は確認できなかった。一方、BMDCにおいては野生型株に比べて著しく高いサイトカイン誘導活性を示す株やサイトカイン誘導活性を抑制する株を見出すことができ、糖鎖の違いとBMDCの活性化には関連性があることが明らかになった。また、脾臓通常型樹状細胞(cDC)においてはDectin-1の発現上昇活性を示す酵母株を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までにマクロファージでは特段の高い活性が得られていない酵母株でも、BMDCでは高いサイトカイン産生活性やサイトカイン産生抑制活性化能があることが明らかになった。また、BMDCにおいては糖鎖の違いと活性化能における関連性が見出されたた。このことから、糖鎖改変酵母の種類を増やし、BMDCの活性化能と糖鎖構造における関係性についてさらなる詳細な解析を進めている。また、脾臓通常型樹状細胞(cDC)においてRaldh2mRNAの発現を誘導するDectin-1の発現量を増幅させる酵母株についてのスクリーニングを現在すすめており、いくつかの酵母株においてDectin-1の発現を増強することを見出している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにDectin-1の発現量を増幅させる酵母株を見出すことに成功している。これらのDectin-1発現誘導株のなかからcDCにおいてRaldh2を発現誘導する酵母株のスクリーニングを行う。また、Raldh2の発現を誘導することができる酵母株およびBMDCにおいてイトカイン産生活性やサイトカイン産生抑制活性化能を示す酵母株の糖鎖構造を明らかにする。さらに、これらスクリーニングによって単離した糖鎖改変酵母に実際に抗原特異的IgAおよびIgG誘導能があるのかについて調べる。また、免疫毒性についても調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初見込んでいた人件費が必要ではなくなったことに加え、実験の都合上スクリーニング数が増加し、動物試験が来年度にずれこんでしまったため。今年度は動物実験を実施するとともに高額なキット類、試薬、消耗品等を新規に購入するため消耗品類等で使用できる。
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