Lacrobacillus rhamnosus FSMM22株は同FSMM15株と比較して有意に高いラミニン接着性を示し、菌体表層にラミニン結合タンパク質として複数のムーンライティングタンパク質を発現している。前年度の研究において、ラミニン結合タンパク質の一つ30Sリボソーマルタンパク質S19(RpsS)は、いずれの菌株においても細胞質内で同程度発現していることが明らかとなった。また、FSMM22株では対数増殖初期における菌体膜透過性が一過的に上昇するためRpsSが菌体外へ漏出することが示唆された。そこで、本年度は両菌株の対数増殖初期および後期における培養液を回収し、これを低融点アガロースにより固化したものを試料として透過型電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、膜小胞と思われる構造物の存在を確認したが、両菌株間のいずれの培養時期においても、その数はごく僅かであり、膜小胞によりRpsSが菌体外へ輸送される可能性は低いことが示唆された。両菌株の菌体破砕残渣をフェノール抽出に供し、得られた水層を回収した。これを陰イオン交換クロマトグラフィーに供し分離したのちフェノール硫酸法により糖質画分を検出したところ、FSMM22株においてのみ0.45-0.5Mの塩化ナトリウムで溶出されるピークが存在した。培養液上清中の酸性多糖をアルコール沈殿並びに陰イオン交換クロマトグラフィーで確認したが、両菌株間で顕著な相違を認めなかった。以上から、FSMM15株と比較してFSMM22株の菌体表層には負電荷を帯びた糖質が顕著に存在することが示された。
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