研究課題/領域番号 |
18K05408
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水口 千穂 (鈴木千穂) 東京大学, 生物生産工学研究センター, 助教 (10733032)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 核様体タンパク質 / 翻訳後修飾 / アセチル化 / プラスミド / Pseudomonas |
研究実績の概要 |
昨年度までに、Pseudomonas putida KT2440株の染色体にコードされるMvaTホモログTurAについて、6残基のアセチル化が同定されていた。このうちK15、K39、K49の3残基は、過去の研究からMvaTホモログの多量体形成に重要な役割を果たすことが明らかとなっている。本年度はTurAと、プラスミドpCAR1にコードされるMvaTホモログPmrについて、これら3残基を一つずつアルギニンに置換(脱アセチル化状態を模したもの)、またはグルタミンに置換(アセチル化状態を模したもの)した派生体を発現・精製し多量体形成能を評価した。その結果、PmrのK49を置換した派生体について多量体形成能の低下が認められた。また、昨年度から継続していたin vitroでのアセチル基部位特異的導入についても、PmrのK49にアセチル基を導入できたことが確認された。 上述の3残基はMvaTホモログの二量体/多量体化ドメイン内に存在している。そこで当該ドメインの機能解析の一環として、このドメイン内に存在する二箇所の二量体化部位のうち、terminal dimerization siteにおけるTurA、TurB、Pmr間の親和性の評価を行った。その結果、Pmrは染色体由来のホモログであるTurA、TurBよりもPmr自身と強い親和性を持つこと、TurAとTurBはヘテロ二量体を形成しやすいことが明らかとなった。これは、もう一つの二量体化部位であるcentral dimerization siteが持つ親和性の傾向とよく似ていた。 今後の実験として、上述の3残基をグルタミンまたはアルギニンに置換した派生体を発現させた時のRNA-Seq解析を計画している。本年度はその前提として必要となる野生型株や各種遺伝子破壊株のRNA-Seq解析も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、前年度同定したアセチル化部位についてタンパク質機能(MvaTホモログの多量体化)への関与を示唆するデータが得られたこと、難航していたin vitroでのアセチル基部位特異的導入に成功し、アセチル化の効果についてより確からしいデータを得る地盤を築けたことから、本研究の目的に向けて順調に成果を出すことができたと考えている。また、MvaTホモログの二量体/多量体化ドメインの機能解析についても一定の成果を出すことができた。グルタミン置換体、アルギニン置換体発現株を用いたRNA-Seq解析の実施には至らなかったものの、その前提となる野生型株や各種遺伝子破壊株のRNA-Seq解析については結果をまとめることができ、現在論文投稿中である。以上より、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度成功したアセチル基部位特異的導入法を用いてPmr以外の派生体も作製し、多量体形成能の変化を評価することを最優先課題とする。また、昨年度進めていたMvaTホモログの構造解析については、今年度大きな進展が無かったため、アセチル化の影響を分子レベルで議論するためにも、今後はより力を入れていくこととする。 一方、MvaTホモログ以外の核様体タンパク質として研究対象としているNdpAホモログについては、昨年度に引き続きタンパク質を切り縮めた派生体を作製して多量体形成能を評価したが、多量体化ドメインの同定には至らなかった。このため、今後はこれまでに作製した派生体を利用してDNA結合ドメインの探索を行う方針に切り替える。NdpAホモログについては標的配列に関する情報すら乏しいため、まずChIP-Seq解析による結合箇所の同定を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
RNA-Seq解析を共同研究により実施することができたこと、また参加を予定していた年度末の2つの学会が新型コロナウイルス感染症防止のため中止となり旅費が不要となったことから次年度使用額が生じた。次年度はこれまで実施できていなかった擬似アセチル化・脱アセチル化置換株のトランスクリプトーム解析を進める予定であるため、この費用に当てたいと考えている。
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