研究課題/領域番号 |
18K05411
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 喬章 京都大学, 工学研究科, 助教 (60571411)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アーキア / ヌクレオシド / 代謝 |
研究実績の概要 |
本研究では好塩性アーキアにおける新規ヌクレオシド代謝経路の全容解明を目指す。本課題の開始までに、リボース-1-リン酸をジヒドロキシアセトンリン酸およびグリコールアルデヒドへ代謝していることが示唆されていた。そこで本課題では、平成30~令和1年度の2年間でグリコールアルデヒドの代謝機構(課題1)およびリボース-1-リン酸の産生機構(課題2)を明らかにする予定であった。平成30年度は特に課題1に注力し、グリコールアルデヒド代謝酵素を同定した。また、課題2に関しては他のヌクレオシド代謝遺伝子とオペロンを構成するウリジンホスホリラーゼとアノテートされているタンパク質を有力候補として、その組換え型タンパク質の調製を試みた。しかし、目的タンパク質は部分的にしか精製できていなかった。 令和1年度には、まず課題1に関してグリコールアルデヒド代謝酵素の反応産物がエチレングリコールであることをHPLCにより同定した。これによりグリコールアルデヒド代謝機構を同定できた。また課題2に関しては、ウリジンホスホリラーゼの精製条件を検討し、SDS-PAGE解析においてほぼ単一となるまで精製できた。各ヌクレオシドに対する精製酵素のホスホリラーゼ活性を検討した結果、リボース-1-リン酸産生酵素であることが明らかとなった。また、反応に至適な塩濃度・温度・pHを決定し、速度論的解析も行った。さらに、ヌクレオシド代謝遺伝子とはオペロンを構成していないウリジンホスホリラーゼに関しても検討を進めた。精製が困難であったためヒスチジンタグを付加した組換え型タンパク質を調製し、メインバンドとなるまで精製し、各ヌクレオシドに対する基質特異性を同定した。またin vivo解析に関しても検討を開始し、グリコールアルデヒド代謝酵素の活性および転写量が増加する培地条件の同定や、アーキア細胞間で大規模に遺伝子をやり取りし異種発現できる系の構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30~令和1年度の2年間でグリコールアルデヒドの代謝機構(課題1)およびリボース-1-リン酸の産生機構(課題2)を明らかにする予定であったが、それらの目標は達成された。また、令和2年度に予定していたin vivo解析についても令和1年度に開始できている。よっておおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は引き続き好塩性アーキアにおけるヌクレオシド代謝経路のin vivo解析を行う。まず、令和1年度に同定したグリコールアルデヒド代謝酵素の活性が上昇する培地条件で好塩性アーキアHalobacterium salinarumを培養する。その細胞の無細胞抽出液中の各ヌクレオシド代謝酵素の活性測定を行う。また、同じ細胞からRNAを調製し、逆転写PCRやRNAシーケンスにより、グリコールアルデヒド代謝酵素やヌクレオシドホスホリラーゼを含むヌクレオシド代謝経路を構成する各遺伝子の転写量解析を行う。これによりヌクレオシド代謝遺伝子の転写・翻訳制御についての知見を得る。また、無細胞抽出液に各クレオシドや各代謝中間反応産物を添加し、エチレングリコールなどのヌクレオシド代謝経路の代謝(中間)産物に変換されるかを検討し、本代謝経路のin vivoでの機能を検討する。 また、これまでに得たデータを基に論文を作成する。論文作成のために再現性などを確認するための実験も行う。例えば、グリコールアルデヒド代謝酵素は好塩性アーキアから精製し、MS解析により遺伝子を同定した。よって大腸菌を用いて組換え型タンパク質を調製し、同定した遺伝子が確かにグリコールアルデヒド代謝酵素をコードすることなどを確認する。さらに、新規ヌクレオシド代謝経路を構成する遺伝子とオペロンを形成していないウリジンホスホリラーゼとアノテートされているタンパク質の機能解析も引き続き行う。
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