研究課題/領域番号 |
18K05412
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
牟田口 祐太 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30724314)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乳酸菌 / アミノ酸 / D-アミノ酸 / 分岐鎖アミノ酸 / ラセマーゼ / エピメラーゼ / 膜輸送 / パーミアーゼ |
研究実績の概要 |
1) D-分岐鎖アミノ酸生産乳酸菌のイソロイシン2-エピメラーゼ遺伝子破壊 乳酸菌が生産するD-分岐鎖アミノ酸(D-BCAA)の同菌における生理的意義の解明を目的として、Lactobacillus fermentum NBRC 3956およびLeuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides JCM 6124 を対象として、相同組換えによるイソロイシン2-エピメラーゼ(ise)破壊を試みた。まず、乳酸菌細胞に導入する遺伝子破壊用のプラスミドや線状DNAを構築した。また、コンピテントセルの作成、エレクトロポレーション、修復培養といった各操作の条件を検討し、乳酸菌細胞へのDNA導入効率の向上を図った。構築した各種プラスミドや線状DNA、検討した種々のDNA導入条件を用いて遺伝子破壊株の獲得を試みたが、令和2年度までにise破壊株は得られない。
2)アミノ酸膜輸送体推定遺伝子(LB1115_2315)の発現タンパク質のD-BCAA排出活性の検討 Lactobacillus buchneri JCM 1115ゲノム中のise上流にコードされているアミノ酸膜輸送体推定遺伝子(LB1115_2315)とiseを、乳酸菌Lactococcus lactis NZ9000において共発現させる系を構築していた。加えて、iseのみを同発現宿主で発現させる系を構築した。これら2つの系にて発現宿主の培養・目的タンパク質の発現誘導処理を行い、培養上清のD-BCAA濃度を比較することで、LB1115_2315発現タンパク質のD-BCAA排出活性の検出を試みた。しかし、LB1115_2315の発現によりD-BCAAが細胞外に排出されることを示す結果は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1)D-BCAA生産乳酸菌のIle 2-E遺伝子破壊株の作成 平成31年度からL. buchneri以外のD-BCAA生産乳酸菌を研究対象として、本研究課題の目的である「乳酸菌におけるD-BCAAの新規機能の解明」に取り組むこととした。昨年度までに、本研究で見出した8株のD-BCAA生産乳酸菌が持つIse推定遺伝子から実際にIse活性を有するタンパク質が発現することを見出した。本年度はその8株うち、D-BCAA生産量が最も高いNBRC396、形質転換効率の最も高いJCM6124の2株を対象にise破壊を試みた。しかしながら、目的の破壊株を得られておらず、研究計画に遅れが生じている。
2)アミノ酸膜輸送体推定遺伝子(LB1115_2315)の機能解析 令和2年度は乳酸菌L. lactis NZ9000で発現させたLB1115_2315の組換えタンパク質をN末端アミノ酸配列解析で確認することを計画していたが、解析に必要な量のタンパク質の精製条件を見いだすことができなかった。そこで、並行してLB1115_2315発現タンパク質のD-BCAA排出活性の検出を試みる実験を行ったが、D-BCAAの排出活性を確認するには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)D-BCAA生産乳酸菌のise破壊株の作成 乳酸菌の遺伝子破壊が困難な要因として、低い遺伝子導入効率があげられる。この問題を回避するために、今後は温度感受性プラスミドを利用した遺伝子破壊方法を検討する。また、これまでにiseを見出している乳酸菌8株以外にも、iseと高い類似性を示す遺伝子を保存する乳酸菌株を相同性検索によって複数見出している。それらについても、遺伝子導入効率、D-BCAA産生性、Iseホモログタンパク質の酵素活性を検証し、ise破壊を試みる。得られたise破壊株は、その遺伝子の発現パターンを野生株と比較し、D-BCAAが乳酸菌の生命活動に与える影響について情報を得る。
2)アミノ酸膜輸送体推定遺伝子の機能解析 令和2年度に実施したLB1115_2315発現タンパク質のD-BCAA排出活性を検討する実験では、目的遺伝子の発現にナイシン誘導型の強制発現系プロモーターを利用した。今後は、L. buchneriのゲノム中でLB1115_2315とiseの上流側にあるプロモーターを用いた発現系にて、D-BCAA排出活性を検討する。これと合わせて、発現宿主の膜画分に検出されているLB1115_2315の組換えタンパク質と考えられるタンパク質のN末端アミノ酸配列を解析し、LB1115_2315由来のタンパク質が実際に発現していることを確認する。また、放射性同位体14Cで標識したL-BCAAを用いて、LB1115_2315を発現させた組換え乳酸菌のL-BCAAの取り込み活性を測定する。
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