研究実績の概要 |
Stearyl alcohol(StOH、高級アルコール)等の培養培地への添加による界面活性タンパク質(EliA)とリパーゼ(lipase)超発現・超分泌、及び生分解性ポリエステルのpolyhydroxyalkanoate(PHA)の細胞内大量蓄積時に、発現量増加タンパク質の中から、プロテオーム解析によりアルコール脱水素酵素(AdhA)が同定され、その遺伝子(adhA)欠損株ではlipase生産量が低下し、adhA遺伝子相補により、StOHを加えた時のAdhA・lipase活性が野生株培養時のAdhA・lipase活性と同程度まで回復したので、StOHによるlipase超発現・超分泌にはAdhAの発現が必須であることが判明した。更に、StOHに加えて、その代謝産物のstearyl aldehyde, stearic acidを混合して添加した場合は、リパーゼ遺伝子の転写量の更なる急上昇、約35 kDaタンパク質の大量分泌現象が見いだされ、本システムの機構解明と実用化の意義は極めて大きいと思われる。最終年度は、研究に用いたRalstonia sp. NT80菌の、より詳細なゲノム解析を実施し(5,933,974bp、99.94%)、Taxonomy plotの結果はRalstonia insidiosaに最も近かった。AdhAによるStOHの酸化を経由したaldehyde、脂肪酸への酸化、β-酸化経路によるアセチルCoAの大量蓄積、生分解性ポリエステルのpolyhydroxyalkanoate(PHA)の大量蓄積経路の推定が可能になった意義は大きい。研究代表者らの今までの研究により、良好な立体選択性を有するlipaseとカルボン酸エステルesteraseが見出され、lactone特異的esteraseは、分子進化工学的手法により12℃の熱安定性向上に成功している。
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