研究実績の概要 |
sigXとsigMのグルコース(Glc)誘導機構がCshA, YlxR, TsaDを含む自己制御系である事を示した。RNAヘリカーゼCshAはRNAポリメラーゼ(RNAP)に会合し、CshAのアセチル化が会合を促進する。CshA会合型RNAPはylxRを制御し、YlxRはtsaDオペロン転写を制御していた。 TsaDは、このオペロンがコードするTsaEとTsaBと複合体を作りtRNAを修飾する事が知られている。YlxRのDNA結合性の解析から、YlxRは染色体に会合する非特異的DNA結合タンパク質で、RNA-seq解析で400程度の遺伝子転写を制御していることを観察した。支配下のfrlBとproB遺伝子について詳細に解析し、前者については論文発表した。 状況証拠と先行研究から、tsaDはピルビン酸脱水素酵素PdhABCDによるアセチルCoA生産を通じてCshAアセチル化を制御していると考え、PdhAをtsaD破壊株でwestern解析した。tsaD破壊株にGlcを添加するとPdhAが野生型より減少し、さらに解析したところPdhAは細胞質画分で減少し凝集タンパク画分に移行した。tsaD株では翻訳に何らかの問題が起こりPdhAは正常なfoldingができず凝集したと考えられる。従って、TsaDはPdhAの正常な翻訳に必要だった。 ylxRもGlc誘導を受けるので、transposon挿入変異株で非誘導株を検索し、タンパク質のリン酸化アルギニン(Arg)の脱リン酸化酵素YwlEを誘導の原因遺伝子として同定した。Argリン酸化は、タンパク質を分解に導く。研究中のGlc制御系の構成因子TsaDとPdhD はArgリン酸化されるので、そのタンパク質安定性を解析しYwlEによる安定性制御を認めた。ywlE遺伝子発現もGlcで誘導され、従って系を始動させるのはYwlEであると考えられた。
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