放射線抵抗性細菌デイノコッカス・ラジオデュランスの高いDNA修復能を担うDNA損傷応答機構において、制御因子であるPprIタンパク質によってDNA修復関連遺伝子群が上方制御される。これまでに作製した15種類(S12T、A64T、E97Q、E119Q、E149Q、R172C、A184S、Y196S、T236S、V237A、H260L、P261S、S276N、R181A、D291N)の変異型pprI遺伝子発現プラスミドライブラリーを用いて、DNA修復タンパク質の発現誘導に与える影響について解析を行った。具体的には、DNA損傷後に発現誘導量が高いddrA遺伝子に着目し、ddrA遺伝子のRDRモチーフを含むプロモーター配列の下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子を連結したレポーター株を作製し、ガンマ線に対して、変異型pprI遺伝子発現プラスミドを含むレポーター株のルシフェラーゼ遺伝子の発現活性の変動を指標としたレポーターアッセイを実施した。その結果、メタロプロテアーゼドメイン内のE119Q及びE149Qの変異は、PprI欠損株と同様にルシフェラーゼ活性が誘導されなかったことから、メタロプロテアーゼ活性を欠失させ、DdrOタンパク質が分解されずRDRレギュロン発現の脱抑制が起こらないと考えられた。また、DNA結合ドメイン内のY196A変異、GAF様結合ドメイン内のV237A及びH260L変異は、野生型よりも低いルシフェラーゼ活性を示したことから、それぞれ、DNA結合性及び環状ヌクレオチドの結合性を低下させPprIタンパク質の立体構造及び触媒活性に影響を与えていると考えられた。このように、レポーターアッセイによりDNA損傷応答機構におけるPprIタンパク質の機能に関わるアミノ酸部位について重要な知見を得ることができた。
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